しかも結婚前の世代における25~34歳までは34.3%ですが、出産、育児を経た35~44歳までは49.6%、45~54歳までは56.6%、55~64歳までは66.7%、65歳以上は82%と上昇していくのです(男性の25~34歳は14.4%、35~44歳は9%、45~54歳は8.2%)。

 日本がジェンダーギャップ指数が高いのは周知の事実ですが、一部の高学歴キャリア層の女性を除けば、一般女性の多くは、低い時給のサービス業や事務員、派遣社員として働くことを余儀なくされています。

 要するに多くの女性にとって「結婚」は、令和になった今でも生活を安定させるための主要素の一つです。「好き・嫌い」だけで「結婚生活」を解消できない事情が、日本社会にはいまだに潜んでいるということです。

年齢階級別非正規雇用労働者の割合の推移同書より 拡大画像表示

 しかし、ここからが問題です。「結婚」に「経済的安定性」を求めるのは、現代日本社会で致し方ないことだとしても、多くの場合、「経済的安定性だけを求めて結婚する」のは、多くの女性にとっては自ら受け入れがたい事実であることです。

 戦後日本ではようやく「親の決めた結婚」から脱却して、「自由意志で結婚できる」社会を手に入れました。戦前は「親が決めたから、泣く泣く好きでもない相手と結婚した」と言い訳が立ったものも、現代日本では「金のために好きでもない相手と結婚した」とはなかなか言いにくいもの。言いにくいだけでなく、本人もそんな結婚は望まないからです。

 近代日本における「結婚」は、他の多くの候補の中から特別に自分が選ばれたという「特別性」と、他者から人生の伴侶として選ばれたという「承認性」を意味しています。

書影『パラサイト難婚社会』『パラサイト難婚社会』(朝日新書、朝日新聞出版)
山田昌弘 著

 単に自分が選んだだけではなく、相手からも「特別な相手」として選ばれたという実感が欲しい。要するに「結婚」=「経済的安定性」だけでなく「愛情」、正確に言えば「自分が相手にとって特別な存在であることの実感」の要素もしっかり入っていないと、自分自身の存在意義が揺らぐのです。

 かくして婚活市場では「イケメン・高学歴・高収入」という、なかなか並立しがたい異なるベクトルをクリアしたごく少数の男性ばかりを求める女性が多くなります。

 これは現代日本女性がワガママなのではなく、「結婚」に、「愛情」と「経済」の両方が求められるようになってしまった背景が大きいのです。