たとえ負けても傷つかず
苦しみの少ない遊び方

 しかし、トップクラスではない馬や選手たちによる「平場」「一般戦」と呼ばれる低位のレースが毎日行われているのも公営ギャンブルです。トップクラスが集まる「重賞」は優秀な選手が間違いなく実力対実力で火花を散らすレースになります。ですが、一般戦では実力以外のサムシングが作用しているように私は考えるし、それを加味して予想してしまいます。そして予想がはずれて、悲しい気持ちになり、「苦渋」を抱えて競技場をあとにします。

 公営ギャンブルは、ほんの少しの「感動」と、巨大な「苦渋」を与えてくれるエンタメといえるのではないでしょうか。

 でも、年代物のウイスキーやブラックコーヒーのように、ビターがあるからこそ味わい深いものもあるのです。公営ギャンブルのある日常は、その哲理を教えてくれます。

 そんな日々の中で、私は負けても傷つかない、苦しみの少ない遊び方を模索した結果、外れることを前提で少額を賭ける、という手法にたどり着きました。

 ひとつのレースに200円から300円程度しか投票しないという方法です。

 すると全レース負けても2000円から3000円程度しか赤字にならず、さして悔しくなりません。居酒屋で飲むのを一軒ガマンすればいいだけです。悔しくないので、負けても楽しさしかありません。

 最初から「居酒屋一回分の金額しか投票しない」と考えれば、そこにあるのは安い酒を少しだけ飲んだような快感です。レースを見て、興奮して、負けたとしてもそれは一杯の酎ハイを飲み干したのと同じ金額です。それなら笑って済ませられます。負けて楽しい公営ギャンブルの世界がここにあります。

 また、少額の投票でも当たればそれなりに嬉しいことにも気がつきました。

 大金を賭けて、大金を稼ごうとするからギャンブルは害悪と見られたり、依存症になって苦しむのではないでしょうか。「今日は3000円ぐらい勝ちたいな~」とみみっちい目標を立て、それに向かって賭ければいいのです。そう思って投票を続けていたら、何回かに一回は2000円から3000円の黒字を達成できるようになりました。

 こうした小さな自己実現でも人間は前向きになれます。熟年世代の大人にはなかなか「自己実現」のチャンスはないですから、「ギャンブルで3000円の勝ち」はかなり気分が高揚します。そして公営ギャンブルがますます楽しくなりました。