写真:競馬場のゲート写真はイメージです Photo:PIXTA

競馬界で数々のG1レースを制してきた日本を代表するジョッキー、川田将雅氏。2022年には史上4人目となる「騎手大賞」を獲得し、今では競馬界屈指の勝者だが、スタートは負け続きだったという。騎手や調教を生業としてきた競馬一家に生まれ、子供時代から勝者になるための厳しい道を歩み続けてきた川田氏。勝ち筋を見つけるには、冷静にレースに挑み続け、正しい判断を積み重ねることが大事だと語る。この記事では、川田氏を勝利へ導いた思考法について紹介する。本稿は、川田将雅『頂への挑戦 負け続けた末につかんだ「勝者」の思考法』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

ゴールに向けて
「勝ち筋」を見つけていく

 幼い頃、大人たちを観察し続けて思ったのは、人のいいところを見つけるのはとても難しいということ。

 半面、言葉は悪いですが、粗を探すのは簡単で、いつしか人の粗探しが癖になっていました。嫌な子供ですよね(笑)。

 今もその癖が抜けないのか、レース中も気づけば他陣営の馬やジョッキーのマイナス要素を探している自分がいます。

 たとえば、この馬は引っかかるな、この馬は進んで行かないな、このジョッキーは焦っているな、外から動いてきたらこの馬も動いていくだろう……など、粗というよりも隙が目につくのです。

 これはジョッキーとして必要な視点だと思っていて、それらを見越したうえで、僕と僕の馬がどう動いていくかを考えます。

 レースとは、スタートからゴールまでこの繰り返しであることを考えると、一瞬一瞬でとんでもない情報量をいっぺんに処理しながら、ゴールに向けて「勝ち筋」を見つけていく作業であるといえます。

 まさに判断の連続であり、正しい判断を積み重ねていくには、レース中に冷静でいることがとても大事なのです。

 とはいえ、競馬は勝負事です。人間ですから、どうしても熱くなります。

 すると、どうしても焦ってしまったり、思いが強くなりすぎてミスを犯してしまったりすると思うのですが、焦りによるミスは僕にはありません。

 あくまで僕視点ではありますが、僕よりも心穏やかに乗っている日本人はいないのではないか、くらいに思っています。

 もちろん、若い頃は技術が足りなかったり、読みが甘かったりして人に迷惑をかけてしまったことはありますが、焦ってしまい……という事象はおそらくないはず。普段は、「なんでそんなに怒れるの?」と言われてしまうほどに沸点の低い僕ですが(笑)、レース中は本当に感情の波がないのです。だから、メンタルトレーニングといった類も、一度も必要だと思ったことがありません。

「なぜ?」と聞かれても上手く説明できないのですが、もしかしたら、これも幼い頃に身についた洞察力と想像力の賜物なのかもしれません。

勝負に関わる「流れ」や
「ゲン担ぎ」について

 どんな仕事であっても「今日はなんだか流れが悪いな」と感じることがあると思いますが、勝負事である競馬にも当然“流れ”というものがあります。

 騎乗馬の状態がことごとく今ひとつだったり、その日に限ってなぜかコントロールの利かない馬が揃ってしまったり、枠順の並びなどで、どうしても道ができない、作れないといった日も……。

 ですが、それらをすべて真正面から受け止めて、上手くいかないことを嘆いていたら心が持ちません。

 だから、僕はそういう日に直面したとき、「今日はこういう日なんだ」とあきらめることにしています。

 僕が思うに、一番の悪手は、結果が出ないときにバタバタしてしまうことです。

 もちろん、若い頃は勝てない日が続くと焦ることもありました。焦っていろいろなことを試したりもしたのですが、当時は20回乗って1回勝つかどうかの時代。「答え合わせ」が20回に1回しかできないわけですから、何が正解かわからないまま、時間ばかりが過ぎていったのです。

 そこで僕は気づきました。

「流れが悪いときこそ、バタバタしてはいけない」ということに。無駄だなと思ったのです。

 いつも通りのことをやって結果が出ないのであれば、そのままいつも通りのことをやり続けて、結果が出るのを待つ。

 それで結果が出る、つまり流れが戻ってきたときに、新しいことにトライする。

 ダメなときに何かを変えるのではなく、いいときにこそ、変えていく。

 それこそ、僕が辿り着いた答えです。

 悪いときほど方向転換を試みるなど足掻きたくなるものですが、そういう時期は何がよくて何がダメなのか、とてもわかりづらいと僕は思います。むしろ泥沼にハマっていく……そんなイメージがあります。

 また、ジョッキーは負けることが圧倒的に多い仕事なので、僕はゲンを担ぐこともしません。