ユーカリ原木を輸送するトラック写真提供:三井物産

三井物産がパルプ世界最大手で森林メジャーともいわれるブラジル企業と提携し、パルプから出る残渣(ざんさ)物や植林資源を使い、バイオ燃料やバイオ化学品を生産する脱炭素ビジネスに乗り出す。同社がこれまで挑戦しては撤退を繰り返してきた植物由来のバイオ化学品事業と、どこが違うのか。担当者を直撃すると従来の脱炭素ビジネスと異なるポテンシャルと収益化に向けた課題も見えてきた。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

脱炭素で連敗の三井物産
「3度目の挑戦」の勝算は?

 三井物産が、脱炭素ビジネスの新しいアプローチに挑戦している。紙パルプ世界最大手でブラジルに世界最大規模の森林資源を持つスザノと提携し、植林資源から船舶燃料や化学品を生産するプロジェクトだ。石油化学品と船舶重油を合わせた世界の市場規模は約6700億ドル(約100兆円、当社推定)。この巨大市場に植林資源で挑む。

 まずは2026年頃をめどにパルプ製造で出てくる残渣(ざんさ)物を原料にして船舶燃料となるバイオ燃料や化学品を生産していく。スザノと事業提携したのは、サトウキビなど植物由来のバイオ燃料や、廃食油などを原料とするSAF(持続可能な航空燃料)に比べ、「競争優位な条件があるから」(三井物産)だ。

 これまで10年以上にわたり、石油化学品の脱炭素ビジネスに取り組んでは失敗を繰り返してきた三井物産。次ページでは、スザノとの提携プロジェクトの勝算や、従来の取り組みとどこが違うアプローチなのかを明らかにする。