伊藤忠、三頭政治終焉で「岡藤一強体制」が加速へ!新体制で次期社長レースの「本命」登場Photo by Norihiro Okawa

伊藤忠商事が1月16日に発表した2026年度の役員人事は、同社の経営体制における歴史的な転換点となりそうだ。10年超にわたって岡藤正広会長CEOによる経営を支えてきた副社長2人の退任が決定し、実質的な「三頭政治」が幕を下ろす。今回の人事は単なる世代交代にとどまらず、岡藤氏による「1強体制」の加速を意味し、ガバナンス構造を変容させる可能性をはらんでいる。連載『クローズアップ商社』の本稿で明らかにする。(ダイヤモンド編集部 大川哲拓)

岡藤長期政権の弊害
“忖度文化”に拍車の懸念

 岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)が伊藤忠商事社長として実権を握ってから15年。「岡藤プレミアム」と称される株高や好業績を実現してきた一方、長期政権の弊害も指摘され始めている。その一つが社内に広がる“忖度文化”への懸念だ。

 同社には、トップの意見に異を唱えた幹部が中枢から去った過去がある。2015年、岡藤氏が主導した中国中信集団(CITIC)への6000億円投資に対し、反対の意を示した当時CFO(最高財務責任者)の関忠行氏は、投資決定直後の人事で退任を余儀なくされた。

 こうした過去の経緯が幹部を萎縮させているとの見方は根強い。また、伊藤忠では岡藤氏の古巣である繊維カンパニー出身者が重要ポストに就く傾向がある。

 同社社員は「本来なら現場決裁で済む比較的小規模な案件でも、会長までお伺いを立てる必要が出てきている。ビジネスの合理性よりもトップの顔色が優先される空気が広がっている」と打ち明ける。

 そんな中、代表取締役副社長執行役員である小林文彦CAO(最高総務責任者)と鉢村剛CFOの退任が発表された。両氏は15年にそれぞれCAOとCFOに就任。11年間にわたって岡藤政権を支え、時には“最高権力者”の方針に意見を差し込む貴重な存在として機能してきた。

 長期続投してきた副社長2人の退任は、組織の新陳代謝を促す側面がある一方、“忖度文化”にさらなる拍車を掛ける懸念も拭えない。次ページで新体制を徹底解剖すると共に、今回の異動で本社に舞い戻る「次期社長筆頭候補」の実名を明かす。