無人の車両Photo:PIXTA

大手私鉄15社の2023年度決算が出そろった。昨年5月に新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類に移行したことで、事実上のアフターコロナ元年となった2023年度は、2020年以来「非常時」に置かれていた鉄道各社の経営に光明が差した1年だった。しかしコロナ禍以降、鉄道の利用形態が大きく変わったことが示すように、事業のあり方は元には戻らない。2023年度と2024年度は、本当の意味での「アフターコロナ」の事業像を探るターニングポイントなりそうだ。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

経常利益でトップは
阪急阪神HD

 まずは各社の決算の概略を見ておこう。経常利益が最も大きかったのは阪急阪神ホールディングスの約1094億円で、次いで東急の約993億円、近鉄グループホールディングスの約846億円だった。阪急阪神HDはコロナ前である2018年度の1%減、東急は21.2%増、近鉄GHDが26.1%増で、東急は過去最高を更新した。

 2018年度との比較では、前述の東急、近鉄GHDに加え、西日本鉄道(約27.3%増)、南海電鉄(約22.7%増)、東武鉄道(約14.4%増)、京王電鉄(約10.7%増)、京阪ホールディングス(約3.1%増)、小田急(約2%増)、京成(約1.7%増)が、コロナ前を上回った。

 一方、コロナ前を下回ったのは、阪急阪神HDに加え、西武ホールディングスが約34.3%減、名古屋鉄道が約27.2%減、東京メトロが約26.2%減、京浜急行電鉄が約24.8%減、相鉄HDが約8.8%減だった。西武HDはコロナ禍で多額の営業赤字を計上したホテル・レジャー事業が立ち直ったものの、運輸セグメント、不動産セグメントともに営業利益が約50%減だった。

 名古屋鉄道も運輸セグメントの営業利益が対2018年度で約47%減、東京メトロが約25%減、京急が約48%減で、各社とも関連事業の収益で運輸事業の赤字を埋めきれなかった格好だ。一方、近鉄GHDは国際物流事業、東急は不動産事業、東武はレジャー事業が新たな収益源となり、コロナ前を上回った。

 純利益の上位3社を見ると、関連会社のオリエンタルランドの株式売却益約708億円を計上した京成電鉄が約877億円、品川駅西口地区(高輪三丁目地区)保有地持分の一部譲渡など約906億円の固定資産売却益を計上した京急電鉄が約837億円、小田急センチュリービル売却など固定資産売却益約600億円を計上した小田急電鉄が815億円だった。

 この他にも不動産事業の回転型ビジネスモデル導入や、政策保有株式の売却など資産の組み替えを行うなど、保有資産の組み替えに着手する事業者が増えている。