東京メトロを除く14社が
今年度決算は増収を予想

 各社は2023年度をどのように見ていたのか。期首に発表した業績予想(東京メトロは非開示)と最終的な決算を比較すると、予想をわずかに下回った京成を除き、全社の運輸セグメントが上回った。特に東武、京急、京王、小田急は100億円前後の上振れとなった。

 またレジャーセグメントも全社が予想を上回っており、人流の回復が事業者の予想以上に進んだことがうかがえる。訪日外国人旅行者は2022年の383万人から2023年は2507万人まで急回復し、2024年は過去最高を更新する見込みだ。各社ともインバウンド取り込みを重視する姿勢を示している。

 逆に大きく下振れしたのは近鉄GHD、名鉄、阪急阪神HDの物流事業だ。国際物流事業はコロナ禍特需の反動で運賃が下落しており、国内物流事業は人件費や燃料費の高騰で営業利益は予想を下回った。

 では各社は2024年度をどう見ているのだろう。決算に合わせて発表された業績予想では、東京メトロを除く14社全てが増収を見込んでいるが、5社は物価、動力費、人件費の上昇による費用増などを要因とした営業利益の減益、9社が金利上昇による支払利息の増加などを要因とした経常利益の減益を予想している。

 セグメント別に比較すると、運輸セグメントはほぼ定常化したと見ているようで、これ以上の回復は期待していないようだ。その中で増益を見込むのは、昨年10月に運賃改定を行った京急、南海、今年3月に行った名鉄と、インバウンドの増加で成田空港輸送が好調な京成だ。

 約50億円の減益を予想する近鉄と小田急は、輸送人員は同水準としながらも、設備更新などの費用増により減益としている。

 この他、大きな減益が予想されているのは阪急阪神HDのレジャー部門(エンターテインメント事業)、東急の不動産事業、東武の不動産およびレジャー事業だ。

 阪急阪神HDは、プロ野球・阪神タイガースが2023年シーズンでリーグ優勝・日本シリーズを制覇した特需の反動と、宝塚歌劇団のパワハラ問題を受けた体制の見直しにより減益。東急と東武の不動産事業は大規模分譲の反動減となる。

 2024年度予想を2018年度と比較すると、この間にセグメントを再編した事業者が多く、単純比較はできないものの、おおむね運輸事業の赤字を不動産事業で埋められている事業者はコロナ前を上回り、そうではない事業者は下回っている。