自民党の長谷川岳参院議員が公務員に「絶対、クビにしてやる」などと威圧的な言動をしていたことが報じられ、炎上している。これまで明らかになっている被害は北海道の職員が中心で、国家公務員の被害の報告は少なかった。とりわけ長谷川氏が副大臣を務めた総務省は「省内から被害の報告はない」と否定してきた。だが、ダイヤモンド編集部の調べで、長谷川氏が副大臣秘書官らを大声で叱責したり、働きぶりについて許しを請う「わび状」を要求したりして、異動や退職に追い込んだ疑いがあることが分かった。特集『公務員970人が明かす“危機”の真相』の#1では、公務員の人材流出を招いている政治家からのパワハラの実態に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
1人目の副大臣秘書官は就任翌月に交代…
高市総務相、次官もパワハラを問題視
「僕はぶち切れるよ」「狂っとるよ」。北海道庁や札幌市役所の職員らが参加した会議で、長谷川氏が発したと報じられた言葉だ。
自身の部下ではない地方公務員に、このような発言をするのだから、総務省の副大臣当時は、部下の同省職員に相当厳しく当たっていたのではと疑われていた。
しかし、長谷川氏のパワーハラスメントが問題になった3月以降、総務省は省内でパワハラ被害があった事実を認めず、調査もしてこなかった。
「(長谷川氏が総務省で副大臣を務めていた)当時の記録を確認した限り、省内のハラスメントや苦情の相談窓口に、長谷川議員に関する相談が寄せられた事実はなかったと報告を受けている」
松本剛明総務相は4月23日の記者会見で、長谷川氏によるパワハラ被害についてこう語った。
しかし、ダイヤモンド編集部の調べで、パワハラがなかったどころか、総務省内でパワハラの被害者が多数いることが分かった。
ダイヤモンド編集部は5月までに公務員を対象にしたアンケートを実施し、約970人から回答を得た。回答の中には、長谷川氏からのパワハラ被害を訴える内容が多くあった(ダイヤモンド編集部は、同アンケートでパワハラの報告が多かった政治家のランキングを後日、本特集で公開する)。
同アンケートにおける長谷川氏によるパワハラの報告は、同氏の地元である北海道や札幌市の職員からのものが多かったが、総務省からも複数の被害の訴えがあった。
取材を進めると、総務省はパワハラの被害を知らないどころか、長谷川氏が副大臣を務めていた当時の高市早苗総務相がパワハラを認識していたとみられること、事務次官が長谷川氏をたしなめていたこと、長谷川氏が副大臣秘書官にパワハラをし、退任時に理不尽なある要求をしていたことなどが分かった。
次ページでは、事なかれ主義に陥った総務省がひた隠す、パワハラの実態を明らかにする。