三菱商事にとって
「社員=無形資産」

 今回の記事ではこの謎から、日本経済の賃上げの未来について論じていきたいと思いますが、先にネタばらしをしておきます。

 三菱商事にとっては社員は無形資産であり、お金を稼ぐ武器です。一方でトヨタにとっては労働者は製造原価であり、削減したほうが利益があがるものです。

 このふたつの真逆の方向性の考え方は、実は日本経済全体を蝕む社会問題でもあります。順を追ってお話ししていきたいと思います。

 今、世界経済全体で成長するふたつの事業セグメントでは人的資本経営が重要視されています。

 ひとつはマイクロソフトやエヌビディアに代表されるマグニフィセントセブンのようなITハイテク領域、もうひとつはゴールドマンサックスやビザ、バークシャーハサウェイなどに代表される金融投資領域です。

 これらの領域で事業を成長させる最大の経営資産は人材です。ところがこの領域で今、おかしなことが起きています。