ビッグテック「市場支配」は規制より創造的破壊が解決、世界トップ企業は入れ替わるPhoto:Yuichiro Chino/gettyimages

政府の規制当局が考える数々の計画は、イノベーティブな企業の「創造的破壊」があれば不要である――。米著名投資家のケン・フィッシャー氏がこのように考えるのはなぜか。1970年~現在の時価総額世界トップ20社の顔触れを振り返り、日米大企業の栄枯盛衰をたどりながら独自の分析を行った。

「独占」問題に対して
政府の規制は誤りである

 日本、米国、欧州連合で選挙が近づき――岸田首相は補欠選挙で自民党敗北後守勢に回っている――世界で政治的喧噪が増している。では、国境や思想を超えて共通している執着とは何だろうか?それは、迎合的な政治家によるビッグテックなどの「支配」への非難だ。

 規制当局はさまざまな「解決策」を仮定する。現実はと言えば、時間の経過とともに、資本主義の血液たる創造的破壊がそうした計画を不要にする――自然と。なぜか、順に説明していこう。

 まず、台頭するテックプラットフォームやAIなどの成功は、独占(または寡占)状態にあるとされる企業への罰則や縮小、罰金、解体を求める声を誘発する。アップルのスマートフォン市場独占を主張する米国での訴訟は一例にすぎない。

 グーグルやアップルのアプリストアでの「独占」解消を狙う日本の法規制もしかり。多くの人は、こうした大問題を政府が「解決」するのは至極正しいと考える。だが、実際にはこれは誤りである。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産25兆円超の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 ビッグテックをはじめとする巨大企業をどう考えるにせよ、政治的「解決」は答えになり得ない。辛抱すれば、創造的破壊――絶えず現れる新たなスタートアップが、優れたビジョンを持って老いる巨人に置き換わることで自然に解決していく。いわば、ほぼ完璧な自己調整の特徴といえよう。

 巨大さとは、すなわち巨利を生む存在である。企業が社会的ゴリアテに成長するに伴い、新しく起業家精神あふれるダビデが倒す機会を見出す。年老いて太った狩人は、狩られる側となる。新たな変革者が出現して台頭し、素早く変化、適応、変革できない古い大物を転覆させるのだ。

 この過程には10~20年かかる――それ以上はまれだ!サイクルは繰り返す――常に。それこそが、私が50年以上この世界を見てきて、反復されてきた物語なのである。そのことを理解すべく、以降では、1970年、90年、2010年、そして現在の時価総額世界トップ20社の顔触れを見てみよう。