銀行株、テック株…2024年後半に投資妙味ありとみる「4つの銘柄群」の選び方Photo:PIXTA

2024年3月本決算時に発表された自社株買い総額は過去最高を更新した。今後も日本企業の企業統治改革は進みそうだ。例年通り会社の業績予想は保守的で、秋以降の上方修正の公算は大きい。年末に向けて株価上昇が期待できる環境下で投資妙味のある株式群を検証した。(UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント ジャパン・エクイティ ストラテジスト 小林千紗)

3月決算発表時の自社株買い
総額は過去最高に

 企業の2024年3月期の本決算発表を終えて、日本のコーポレートガバナンス改革は第2フェーズへ移行した。

 具体的には、日本企業の変化への期待が株価をけん引する第1段階から、日本企業が本決算や中期会社計画(中計)で提示した、変化の実行および結果が求められる第2段階に入ったといえる。さらに別の言い方をすれば、期待値相場から業績相場へシフトしたともいえる。

 24年3月期の本決算の場で、過去最高額の6.3兆円、241社(4月から5月15日までの合計)の自社株買いが発表された(図表1参照)。これまで最大だった23年3月期本決算時の3.6兆円を75%上回る水準である。また、3月期決算企業の51%が増配の計画(25年3月期、対24年3月期)を発表した。

 短期的な注目材料であった、余剰キャッシュを活用した自社株買いや株主還元強化がおおむね実現したといえる。株主還元のあり方として以前は、株価下落時に自社株買いを発表する企業が多かった(自社の株価が割安であるという会社からのメッセージ:シグナリング効果)。

 ただ、近年は中期的な資本効率を意識して自社株買いを開示する企業が増えている。これは、コーポレートガバナンス意識の高まりの表れといえよう(自社株買いは自己資本の低下を通じてROE〈自己資本利益率〉向上に寄与するため)。

 今回、中計を発表した企業の多くは現在の水準を上回る中期ROE目標を掲げ、政策保有株削減の見通しについても提示した。6兆円を超える自社株買いの実行は、今後の日本株を下支えする効果が期待できよう。

 一方で、25年3月期の会社予想の純利益は前期比微減益であった。1兆円の営業減益計画を発表したトヨタ自動車を除けば横ばいであり、例年通り保守的と言えなくもないが肩透かし感が否めない。特に日本株に知見が深くない海外投資家からしてみると短期的な投資妙味に欠けると映っても仕方がないといえる。

 しかし、会社予想には保守的な点がいくつか見られる。次ページ以降、その根拠を検証しつつ、年後半に向けての株価動向と注目すべきを予測する。