意外としがらみの多い「交通系IC」
対応・非対応で経費が倍違う!
Suicaなどの交通系ICカードを鉄道・バスの運賃支払いに使うためには、カードと読み取り端末が、「日本鉄道サイバネティクス協議会」に準拠した、通称「サイバネ規格」に対応することが前提となる。かつ、JR東日本の系列会社からのカードリーダー購入や、規格の維持に必要な会費の支払いなど、高コストになってしまう要素がいくつもある。
今回、熊本県の鉄道・バス5社が交通系ICから撤退する最大の理由は、機器更新のタイミングだ。現在使用している交通系IC対応端末が更新の時期を迎えており、そのまま維持した場合は12.1億円かかるが、新しい機器(レシップ社製)に入れ替えた場合は6.7億円に抑えられるという。
かつ、国土交通省のキャッシュレス推進のスキームが「導入には補助を出すが、維持には出さない」という方針。交通系ICを維持すると、更新・運用ともに高コスト+補助が望めない一方、非対応化すれば低コスト+新たに国など
繰り返すが、交通系ICはしがらみが多く、維持するためのコストが高すぎる。費用負担の壁を越えられず、熊本県の鉄道・バス5社は交通系ICから撤退していくのだ。
なお、交通系ICへの対応には具体的にどれくらいかかるのか、情報の詳細は公開されていない。が、沖縄県でICカードの導入が検討された際、以下のような見積もりが出ている。
「独自規格なら導入は27億円・運営費は年間5000万円。交通系IC対応の場合、導入費用は2倍、年間経費4倍」(2014年・那覇市議会資料より)
対応する・しないで圧倒的なコストの違いがあり、その後、(サイバネ規格に対応しない)独自規格として15年にOKICA(沖縄県)のサービス開始につながった。