今回の企画の場合、「父の日」なのだから父が喜ぶ企画という前提があり、そう考えると「娘とのウェディングフォトを父が望んだ(少なくとも喜んだ)」と受け取るのが自然である。これが「子どもの日」のサービスで「大好きなパパとドレスで記念撮影」だったら、そこまでの批判は受けなかったと予想される。
「ママと息子のお泊まりプラン」も
過去に炎上していた
(3)について逆のパターンは連想しづらいが、調べてみると、母の日には母親がウェディングドレス、息子がタキシードを着て記念撮影をするという企画も行われていた。しかし幼い子どもが「将来はパパ(ママ)と結婚したい」と言うことはしばしばあるだろうし、その様子は子どもらしく愛らしいものであるが、それに大人が本気で付き合いだすと、おやおや大丈夫かな……と感じるものがある。
ちなみに2021年には有名ホテルリゾートが仕掛けた「ママと息子のお泊まりプラン」がネット上で炎上している。このときはホテル側がすぐにプランを取りやめたため、詳細は明らかではないが、批判した人たちは子どもを恋人のように扱うことの危険性を指摘していた。また同時期には、息子、娘と異性親がそれぞれデートするモチーフの自動車のCMにも同様の指摘がなされていた。
問題が問題だけにあまり率直な指摘のされ方はなされないが、こういった企画への批判の深部にあるのは(4)の近親姦(性虐待)の問題だろう。
日本では海外より性虐待は少ないのではないかと漠然と考えられてきたが、昨今の法改正に追随する報道の中で、明るみに出ないだけで家族や親族からの性虐待は決して少なくないという認知が広がりつつある。
「考え過ぎ」と思う人もいるだろうが、たとえば「成長期の娘の体つきをからかう」「息子がエロ本を隠し持っていたことをSNSで公にする」といった親がいた場合に、昔より今の方が断然世間の目が厳しくなっているのは確かだ。
子どもを恋人のように扱うことへの批判的な視線はこの延長線上にあり、やっている側が無自覚であればあるほど、指摘は厳しくなると言える。
企画を仕掛ける側の企業からすれば、顧客への訴求や自社のリソースなどを色々考えた結果としてなのだろうが、親子の恋人設定は現代においてかなりタブー化していると思っておいた方がよいだろう。また、こういった企業の企画を取り上げるメディア側も、取り上げ方を考慮した方がよいと言えるだろう。