狂乱バブル ホテル大戦争#5Photo:Moarave/gettyimages

三井不動産、三菱地所、森トラストの国内三大デベロッパーは、ホテル・リゾート開発でしのぎを削ってきた。ラグジュアリーホテルでは森トラストが独走し、三井不動産が追う展開だ。なぜ森トラストはラグジュアリーホテルの王者となれたのか。また、2社の後塵を拝している三菱地所が抱く壮大な野望とは。特集『狂乱バブル ホテル大戦争』の#5では、国内三大デベロッパーのホテル開発戦略に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

自前のラグジュアリーブランドを
不動の地位にしたい三井不動産

 日本の不動産業界の頂点に君臨するのが、三井不動産だ。オフィス、マンション、商業施設、物流施設など幅広いポートフォリオを持ち、全ての部門で分厚い営業収益がある。そして、オールマイティーであるのはホテルもしかりだ。

 大規模再開発プロジェクトでは、ブルガリ ホテル 東京やフォーシーズンズ ホテル 東京大手町といったラグジュアリーホテルを誘致したほか、アッパーアップスケールのザ・セレスティンホテルズやアップスケールカテゴリーの三井ガーデンホテルズ、sequenceを展開する。ハレクラニ沖縄やアマネムといったリゾートラグジュアリーなども手掛け、三井不動産グループで国内46ホテル約1万2000室を運営する。まさに業界王者として、“横綱相撲”を取っている。

 もともと三井不動産には、ホテル開発における“夢”があった。海外でも通用する独自ブランドのラグジュアリーホテルを開発することだった。

 それが実現したのは、2020年11月のこと。京都・二条城近くにある三井総領家(北家)2代目当主、三井高平が邸宅を構えた三井家ゆかりの地に「HOTEL THE MITSUI KYOTO」を開業した。三井不動産がプライドを懸けて開発したラグジュアリーホテルだ。

 HOTEL THE MITSUI KYOTOはホテルの持つ歴史性やストーリー、クオリティーが評価され、世界最大のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルのラグジュアリーブランドである「ラグジュアリーコレクション」に登録された。

三井不動産がプライドを懸けて開発したラグジュアリーホテル「HOTEL THE MITSUI KYOTO」三井不動産がプライドを懸けて開発したラグジュアリーホテル「HOTEL THE MITSUI KYOTO」 提供:三井不動産

 またHOTEL THE MITSUI KYOTOは、ホテル格付けの世界的な権威である「フォーブス・トラベルガイド」において、3年連続で最高評価の五つ星を獲得している。HOTEL THE MITSUI KYOTOは、世界に誇れるラグジュアリーホテル群の一員になり、三井不動産の夢がかなった格好だ。

 三井不動産はホテル開発について、将来的にはHOTEL THE MITSUIをはじめ各ブランドの拡大を目指すものの、ひとまずは“現状維持”だ。今後の国内パイプライン案件は5件にとどまる。

 三井不動産ホテル・リゾート本部の担当者は「グループで1万室体制を維持しながら、それぞれのブランドホテルに磨きをかける」と述べ、量より質を高める方針だ。

 三井不動産に対し、ラグジュアリーホテルの王者ともいえるのが、森トラストだ。シャングリ・ラ 東京やコンラッド東京などの外資系ホテルを誘致したほか、他のデベロッパーに先駆けてオリジナルブランド「翠 SUI」のラグジュアリーホテルを3軒開業させている。

 なぜ、森トラストはラグジュアリーホテルの王者になれたのか。

 次ページでは、森トラストがラグジュアリーホテルの王者になれた理由を解き明かす。森トラストは先駆者として先行者利益を享受しているだけではない。森トラストがラグジュアリー王者たるゆえんは、ライバルがおろそかにしがちな「連携」にあった。

 また三井不動産、森トラストに後れを取る三菱地所が抱く「壮大な野望」もつまびらかにする。三菱地所は両者にキャッチアップすべく、“追撃体制”を整えて大逆転を狙っているのだ。