狂乱バブル ホテル大戦争#6Photo by Masato Kato

大手デベロッパーの森トラストはラグジュアリーホテルの王者としての地位を確立している。特集『狂乱バブル ホテル大戦争』の#6では、同社の伊達美和子代表取締役社長が、ダイヤモンド編集部のインタビューに応じ、ラグジュアリーホテル分野で独走できた理由を明かした。(聞き手/ダイヤモンド編集部 下本菜実)

日本のホテル価格は
グローバルスタンダード化している

――新型コロナウイルスの感染拡大を経て、ホテル業界では客室稼働率ではなくRevPAR(販売可能な客室1室当たりの収益)を重視するようになりました。結果、宿泊料金が上昇しています。消費者は現在の価格を受け入れていると思いますか。

 航空業界では、需給に応じて価格を変動させる「ダイナミックプライシング」が導入されています。これがホテル業界でも、定着してきたということだと思います。

 もともと日本のホテルは“定価”というものを設けていました。そして、稼働率主義でした。稼働率主義であれば、単価を下げることで、稼働率が上がります。なので、セールスマンは、稼働率を上げるため単価を下げて顧客を獲得することが仕事だったわけです。しっかり稼働率が取れるときには、単価を上げるのですが、そこまでドラスティックに実行できていませんでした。

 状況が大きく変わったのは、2013年ごろでしょうか。日本において、過去の販売データや需給動向を踏まえ、宿泊料金や提供する客室数を管理して収益を拡大させる「イールドマネジメントシステム」が普及しました。日本に参入した外資系ホテルが、イールドマネジメントシステムを導入している事実が広まったのです。

 そしてその頃、インバウンド(訪日外国人観光客)が増加し、政府が東京オリンピックを誘致したことをきっかけに日本でホテルが不足し、需給逼迫で価格が上がりました。この頃から、需給のバランスを取るという意味で、批判はややありましたが、宿泊料金の変動が許容されるようになってきたと思います。

 海外では日本以上にホテルの価格が高騰しています。欧米系の訪日客から見ると、日本のホテルの価格は決して高くない。例えば、ハイシーズンの京都では、外資系ホテルが展開するラグジュアリーホテルの宿泊単価が20万~30万円で、日本人からすると恐ろしい金額ですが、海外の方からすると普通の金額ではないかと。日本におけるホテルの価格自体が、グローバルスタンダード化したんだと思います。

 では、日本人旅行客は、ホテルに泊まっていないのか。そういうわけではありません。日本人旅行客の人数自体は減っていますが、単価は下がっていません。宿泊料金が上がっていても、積極的にホテルを利用する方は一定程度いらっしゃるのです。こういう状況を踏まえて、より多くの日本人旅行客を取り込もうと、外資系ホテルはコンバージョンという形で、宿泊特化型のホテルを大量に供給していくことが考えられます。

 一方、日本のデベロッパーは、もともと良いホテルを作りたくなるという傾向が強いので、宿泊特化型ホテルへの動きは遅いかなと思います。

――森トラストは外資系ホテルの誘致については、パイオニア的存在です。しかも、外資系ホテルブランドを幅広く誘致しています。成功の秘訣は。