世界五大ホテルチェーンの一角、米ハイアット ホテルズ コーポレーションが日本発の温泉旅館ブランド「吾汝 ATONA」を展開する。ブランドに特化して設立した不動産ファンドにはゼネコン大手の竹中工務店も出資し、まずは国内3カ所で温泉旅館を開業する。特集『狂乱バブル ホテル大戦争』の#8では、ハイアットが繰り出した新戦略の中身とその勝算に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
不動産ファンド活用した開発手法
ハイアットの新戦略の狙いとは
世界五大ホテルチェーンの一角、米ハイアット ホテルズ コーポレーションが展開を決めた日本発の温泉旅館ブランド「吾汝 ATONA」は、30~50室のスモール・ラグジュアリーホテルだ。まずは2026年以降、大分・由布、鹿児島・屋久島、神奈川・箱根で開業を予定している。
訪日外国人旅行者(インバウンド)数が伸び続ける日本において、個性的なホスピタリティーを提供することが武器であるハイアットは、日本ならではの文化といえる温泉旅館に着目した。
ハイアットは、ブランドポートフォリオに温泉旅館ブランドを組み込んで戦略的に拡大していく方針を決め、22年に吾汝の運営を担う合弁会社「Atona」を設立。Atonaの最高執行責任者には、星野リゾート 青森屋総支配人などを歴任し、温泉旅館のオペレーションに詳しい渡部賢氏を招いた。
ユニークなのは、ATONAの開発手法だ。ATONAに特化した不動産ファンドを設立し、温泉旅館の開発や改修案件に投資する。ファンドは、ハイアットの関連会社と、古民家や旅館などの事業再生で経験豊富なKirakuとで組成。大口投資家としてハイアットとゼネコン大手の竹中工務店が出資、Kirakuも出資者に加わった。
すでにファンドは100億円でファーストクローズし、最終的なファンド総額は200億円規模を目指す。
なぜ、ハイアットは“新戦略”ともいえる、ファンドを通じた温泉旅館の開発を打ち出したのか。
次ページでは、ハイアットが新戦略を打ち出した狙いとその勝算を解き明かす。ハイアットの新戦略は実のところ、ホテル開発における大手デベロッパーの地位をも脅かしかねないインパクトを持っているのだ。