狂乱バブル ホテル大戦争#9Photo by Masato Kato

世界最大のプライベートエクイティ・ファンド、ブラックストーン・グループ・ジャパンの代表取締役、橘田大輔シニア・マネージング・ディレクターが、ダイヤモンド編集部のインタビューに応じた。ホテル投資の極意を明かし、投資は「数年で明暗が別れる」と断言する。その発言の真意とは?特集『狂乱バブル ホテル大戦争』の#9では、ブラックストーン橘田氏のインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

ファンダメンタルズが良くなったわけではない
日本の魅力が再発見された

――グローバルで見て、日本の不動産市場はどのような位置付けですか。

 米国をはじめ、欧州、オーストラリア、アジアでは、金利の上昇に伴い、不動産購入時の銀行からの借り入れが難しくなっています。その点、日本はまだ問題ありません。日本の金融機関の基盤は強固です。日本では借り入れに対する不安がないので、不動産の流動性は高いと考えています。

 このような金融市場の安定と政治的な安定が、日本の不動産市場を下支えしています。そこへ円安が重なり、国内外の投資家全般にとって、日本の不動産市場が魅力的に映る状況といえるでしょう。

 これだけ多くの投資家の皆さんが興味を持っているということは、ファンダメンタルズが良くなったと思うかもしれませんが、実はそうではありません。実際は引き続き供給も多く、賃料がすごく上がっているわけでもない。

 日本市場は魅力的で流動性も高いので、相対的に取引をしやすい環境に映り、安心して投資できる市場といえるでしょう。

――訪日外国人旅行者(インバウンド)が活況であることから、ホテルに対する投資が活発化しています。

 日本が何か変わったかというと、大きくは何も変わっていないと思います。歴史上、今がピークと言っても過言ではなく、円安もあって日本の良さにスポットライトが当たっています。日本を訪れた外国人が「日本っていいよね」と、日本の良さを再発見し、世界中に発信してくれているからです。

 一方、日本人にとっては、円安により海外旅行を控える動きがあり、その代わりに国内旅行が人気になりました。そのため、ホテル業界全体の業績も堅調で、この数年の闇を抜けてきた感じがします。

 ホテルは不動産分野に入りますが、不動産ではない側面もあります。オペレーショナルアセットと呼ばれるもので、どちらかというとプライベートエクイティに近い投資です。

 つまりホテル投資では、ホテルのオペレーションに携わるのです。例えば、ホテルのブランディングをはじめ、宿泊料やレストランのメニューなどのプライシング、サプライチェーンを活用して良い材料をいかに安く調達するか、といったことを検討します。

 最近、多くのホテルが建設されていますが、ホテルのオペレーションを分かった上で建てているかどうか疑問です。今後の数年間で、ホテルによって優劣が出てくると考えています。

――なぜ、優劣が出るのでしょうか。