相場の先読みに使える「投資家心理」の評価法、米著名投資家が明かす実践的なテクニックPhoto:picture/gettyimages

株価とは、期待と現実との乖離(かいり)の影響を大きく受ける存在であり、投資家心理の評価は非常に重要となる。そこで、米著名投資家として知られるケン・フィッシャー氏が、自らも実践する投資家ムードの測り方を明らかにする。

投資家心理の分析からは
今後も強気相場の余地あり

 米国株は上昇を続け、懐疑的な人々を物ともせず、私が昨年12月に予想した通り(『24年の米国株、「目下の強気相場は終わらない」と米著名投資家ケン・フィッシャー氏が断言する理由』)、好リターンを見せている。

 米S&P500株価指数は今年5月末までに米ドルベースで11.3%上昇し、世界株の9.5%上昇をけん引した。為替市場における日本円の妙な動きを無視しても、日本株は順調に上昇している――米ドルベースで7.0%だ。さらなるリターンが待っている――米国や日本、そして至る所で。

 これを知る方法の一つとは、何だろうか。それは、投資家心理である。株価というものは、期待と現実との乖離(かいり)の影響を大きく受ける存在であり、投資家心理の評価は非常に重要なのだ。

 さらに言えば、その中には難しい方法と、簡単な方法がある。現在は、いずれの方法においても、この先のポジティブサプライズの余地を残している――さらなる強気相場についても。

 伝説的投資家ジョン・テンプルトン卿は言った。「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」。彼の言葉は、投資家心理の循環的な変遷を完璧に捉えている。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産25兆円超の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 例えば、新型コロナウイルス感染拡大を受けた2020年のロックダウンの際、底値からロケットが発射するように素早く回復し――絶望の中で生まれた――21年の投資家心理は異常に速く回復した。

 暗号通貨やSPAC(特別買収目的会社)のIPO(新規株式公開)を巡っては、一部でフロス状態が現れ――ソフトバンクが支援したGrabの熱狂的なNASDAQデビューなど――ネガティブサプライズを準備した。

 その後、ウクライナ、インフレ、利上げ、供給網の混乱……これらを受けて、さらなる株価の下落が訪れた。だが、22年中盤までに、長引く懸念が非合理的なレベルの悲観をけん引し、ポジティブサプライズと22~24年の世界強気相場を育んだ。

 以来、世界中で投資家心理は幾分、回復の動きを見せた。バンク・オブ・アメリカの5月のファンドマネジャー調査結果は、世界経済への期待の低下の影響もあるとはいえ、21年11月以来、最も強気を示している。

 日本の消費者信頼感指数は依然低調だが、22年中盤の底値からは回復している。内閣府・財務省の法人企業景気予測調査では、BSI(景況判断指数)が、22年終盤の企業による経済見通しの底値を大幅に上回っている。世界中の調査も、おおむね従来明るい見通しを示す。だが、懐疑的見方は残る――特に欧州で。

 それなのに、弱気派は奇妙にもどういうわけか陶酔まで早送りしたと考えている! 2つの戦争や、日本経済収縮などの古い懸念を投資家熱狂の「証拠」とし、株式の下落の前兆だと言う――同時にごく少数の株式が、この強気相場を支えていると主張する。だが、この見方は誤りだ! 世界株式の約36%が、日本円ベースで年初来リターンの22.1%をけん引している。

 では、具体的にどうやって投資家心理を評価するのか?

 まず、当社も用いる難しい方法から紹介しよう。プロ投資家心理の在り方を示す「ベルカーブ」についてだ。