店員が客を平手打ち。手に持ったコーヒーの粉を客に投げつける……上海の人気コーヒーチェーン店で立て続けにトラブルが起き、動画がSNSで拡散され、大きな反響を呼んだ。もしこれが日本であれば、客に手を上げた店員は相当世間に責められることになりそうだが、中国でのコメントの多くは店員を擁護し、客を責めるものだった。なぜ人々は店員の味方をするのだろうか?実はこの背景には、急成長する中国のコーヒー市場と、過酷な労働環境という二つの問題が潜んでいる。(日中福祉プランニング代表 王 青)
コーヒーショップで、男性店員が女性客を平手打ち
6月中旬、中国・上海の大手コーヒーチェーンで、店員と顧客の間に激しい口論や殴り合いなどのトラブルが相次いで発生した。これらの動画はSNSで急速に拡散され、大きな反響を呼んだ。
動画では、店員が顧客に対して、ヒステリックに怒鳴ったり、攻撃的な行動を起こしたりしていた。ある動画では、女性店員が挽いたコーヒー粉を女性客の顔に投げつける。またほかの動画では、男性店員が店から飛び出して女性客を平手打ちしている。いずれも、普通ではありえない出来事である。日本で飲食店の店員がお客に手を上げたら大問題になりそうなものだが、ここは中国。意外なことに、SNSでは「よくやった!いい気味だ!」と、9割以上のネットユーザーが店員の肩を持っている。同時に、店員を雇用する会社に対して批判が集中した。この反応の背景には何があったのか。
話題になったのは、2015年に上海で設立され、急拡大している人気の大手カフェチェーン「Manner Coffee(以下、マナーコーヒー)」。創業時はわずか2平方メートルの小さな店舗だったが、今は中国全土で1200以上の直営店を展開するまでに急成長している。値段は15〜20元前後(約330〜440円)だが、最近は1杯9.9元(約220円)という低価格路線にも参戦している。ハンドドリップにこだわるのが特徴で、中国在住の日本人にも人気が高い。
マナーコーヒーの人気ゆえに、今回の動画が世間に与えた衝撃は大きかった。筆者も先日、中国に滞在したときには何回も利用した。コーヒーはおいしく、店内もシンプルでお洒落な雰囲気、一服するのに良い店だと思った。