トラブルの根本的な原因は、過酷な労働環境と低賃金
これらのトラブルの背景には、マナーコーヒーの厳しい労働環境がある。元従業員はネットで「会社の規定では、お客さんからの苦情が3回あったら、クビになる」と明かした。また、多くの店舗は5〜20平方メートルの大きさで、1日の売り上げが5000元(約11万円)以下の店舗には店員1人しか配置しない規定があるという。
いわゆる「ワンオペ」だが、中国メディア「上游新聞」によれば、店員の1日の勤務時間は通常7:00〜22:00で、遅刻や私用休暇は皆勤手当の1000元(約2万2000円)が差し引かれる。トイレ休憩の時間も制限されている。店員は1人で、1日に平均300杯のコーヒーを作るほか、棚卸しや清掃などすべての仕事をこなさなければならない。ほとんどの店舗には休憩スペースがなく、つまり最長15時間は立ちっぱなし勤務だ。
給与は地域によって違うが、月収3000〜5000元(約6万6000〜11万円)。北京や上海など物価が高い大都会では、生活費や家賃を差し引くとほとんど手元に残らない。また、各店舗に監視カメラが付いており、店のようすはすべて監視下に置かれている。「精神的に、ものすごいプレッシャーだ」と元従業員は話す。
中国コーヒー市場の急成長と競争激化
近年、中国では大都市を中心にコーヒーの需要が急増している(参考記事)。上海のカフェ店舗数は世界一となり、8000店以上に上る。Luckin Coffee(ラッキンコーヒー、瑞幸珈琲)を始めとする新興チェーンや個人経営のカフェが急増し、激しい競争が繰り広げられている。特にコロナ以降は、上海市内を歩くと、テイクアウト中心の小さなカフェが非常に多くなってきたと感じる。そして、コーヒーのほか、タピオカミルクティーやフルーツティーを中心に「新式ティードリンク」の店舗も非常に多い。
こうした熾烈な競争の中で生き残るため、各企業はコーヒーの品質を維持しながら低価格を実現しようと、家賃や人件費を抑え、徹底的なコスト削減を行っている。その結果、従業員の労働条件が犠牲になっている現状がある。社員教育を行うどころか、社員の最低の労働条件さえ守られていないのだ。