水に落ちたら「ういてまて」
靴を履いていたほうが浮きやすいことも

 水に落ちたとき、溺れたときに効果的なのが、あおむけの体勢で水面に浮かぶ「背浮き」だ。「息を吸って呼吸を止めること」「上半身を起こそうとしないこと」がポイントになる。浮いたまま、救助を待つことは、「ういてまて」の標語で知られている。

 よく、水辺に〈助けて!〉と声を出しながら大きく手を振っている人のイラストが描かれた看板が設置されているが、これは「その場所で溺れる危険性」を訴えるものでしかない。「実際に溺れたときにこの動きを真似して、ぶんぶんと手を振ると逆に沈む。物理的に説明すると間違い」(木村氏)

 物理的に詳しく説明すると、ヒトの比重(真水)は息を吸った状態では0・98であり、身体の2%が水面上に出る(以下の図参照)。また、息を吐き出すと比重は1.03となり全身が水面下となる。ぶんぶんと手を振ると、手が水面上に出てしまい2%以上に相当する。つまり、水没するということだ。

水に溺れたとき生死を分ける初動とは?実は大人こそ大注意!水難事故から我が身を守る実践法提供=木村隆彦氏

 さらに、「着衣のまま」というのも助かるためのポイントになる。服と体の間に空気だまりができて浮力が増え、「靴」の浮力も味方に付けられるからだ。大人も子どもも靴を履いたまま全身の力を抜けば、足が自然に浮き上がるようにできている。「浮くことは、難しいことではない。人の体は『浮く』ようにできていると信じられるかどうか」(木村氏)が命を分ける。

 特に浮く「靴」は、ポリウレタン製の運動靴だ。体育の授業で「外履き」として使う靴をイメージすると分かりやすい。「クロックス」など軽いサンダルも浮きやすい。

 一方で、ゴム製の「上履き」や、ゴムとキャンバス布で出来ている「コンバース」のスニーカーは沈むので注意したい。