米中小企業には
日本企業から学ぶことがたくさんある

 卒業後は、起業するか、企業に就職するか、まだ決めていませんが、やりたい仕事は決まっています。それは中小企業の支援です。

 一般的に米国企業は生産性が高いと思われていますが、それはアップルやアマゾン・ドット・コムなどごく一部の巨大企業に限った話であって、中小企業の生産性はそれほど高くありません。中小企業の生産性を向上させるために威力を発揮するのが、日本企業のオペレーションモデルだと思います。

 ハーバードの授業ではトヨタ生産方式が自動車メーカーだけではなく、製造業、ヘルスケア業など、さまざまな業種の企業に導入され、生産性の向上に貢献していることを学びました。また日本滞在中は、公共交通機関やコンビニエンストアなどを通じて、日本では大企業だけではなく、中小企業や地方の小売店まで優れたオペレーションが浸透していることを知りました。

 日本のコンビニエンスストアの品揃えやオペレーションがあまりにもすばらしかったので、帰国後、興味を持って調べてみたところ、日本のセブン-イレブンが親会社の米セブン-イレブンを買収し、サプライチェーンを改善してきたことを知りました。米国企業は日本企業から学ぶべきところがたくさんあると思います。

 卒業までの1年間、ハーバードでもっと日本企業のサプライチェーン管理やオペレーション管理について学んで、アメリカの中小企業の支援に役立てたいと思っています。

*本記事に登場する学生のインタビューは、個人の意見を反映したものであり、ハーバード大学およびハーバード大学経営大学院の見解を示すものではありません。

佐藤智恵(さとう・ちえ)
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組、音楽番組を制作。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著書に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)、最新刊は『コロナ後―ハーバード知日派10人が語る未来―』(新潮新書)。講演依頼等お問い合わせはhttps://www.satochie.com/