BEV論点は5年後に乗るのがバカらしいか否か
総評は「バリュー・フォー・マネー」

 全長4.3m級の小型クロスオーバーモデルとしては、とても良好にまとまっているEX30。補助金適用前の価格559万円は、プレミアムセグメントでは一部のエンジン車と競合する水準であり、動力性能や快適性の高さを考えれば十分な競争力を持つといえる。

 長距離を走る場合、エンジン車に比べて充電に手間がかかるのはBEVの宿命だが、中大型BEVと比較して航続性能や急速充電受け入れ性で引けを取らないのは魅力的なポイントだ。

 最近、世界的にBEVへの風当たりが強くなっている。航続性能や充電など使い勝手の面でエンジン車に劣ること、価格が高いことが主因だが、ユーザーが疑念を抱いているのはそれだけではない。安全性や、長期間使用した場合のバッテリーの耐久性はどうか。進化のスピードがエンジン車と比べても格段に速いため、あっという間に時代遅れになるのではないか――、さまざまな疑念をユーザーから持たれている。

 EX30もまた、そういう懸念と無関係ではない。ただ、1800kmもドライブした実感としては、少なくとも、5年後に乗るのがバカらしくなるくらいに旧態化しそうだという印象はなかった。

 少なくとも、速さと快適性については十分に一級品であり続けるだろうし、航続力、充電受け入れ性についても5年後の新商品群には負けるだろうが、充電インフラの能力が劇的にアップデートされない限りは悲観するほどの差にはならないだろう。

 総じて、プレミアムセグメントの顧客である高所得者層にとって、「バリュー・フォー・マネー」なBEVであることは間違いなさそうだ。

マルチセグメントタイプのヘッドランプマルチセグメントタイプのヘッドランプ。ただし先行車や対向車を避けて照射するアクティブハイビームは持たない Photo by K.I.
日本海に沈みゆく夕日日本海に沈みゆく夕日を眺めに鶴岡へ Photo by K.I.