話題の「リスキリング」を
成功させるための1冊

 次は2冊目だ。

夏休みに読みたい「ビジネス力&教養力」爆上げの3冊!書評のプロが選んだオススメ本とは?未来のキャリアを創る リスキリング』(小野 隆 著、すばる舎、税込2980円)

 生成AIが登場するなど環境の変化が激しい現代においては、若手社員・ベテラン社員を問わず、自身をアップデートするための学びが欠かせない。この夏休みこそ、そのベストなタイミングではないだろうか。

 現代のビジネスパーソンの学びと聞いて、皆さんが真っ先に連想するのは「リスキリング」だと思われる。「学び直し」と訳されることが多いが、学校教育を終えた後も学び続ける「リカレント教育」や「生涯学習」とは毛色が異なる。

 リスキリングは単に教養を深めるだけでなく、社内での新規事業やDX(デジタルトランスフォーメーション)、あるいは転職など、「ビジネスの世界」でこれまでとは違うスキルを生かすことが前提となっている。

 今回紹介する『未来のキャリアを創る リスキリング』(すばる舎)では、デロイト トーマツ コンサルティングで活躍する3人の著者陣が、リスキリングの始め方や続け方、そして成功の秘訣などを実践的に解説している。

 具体的には、本書ではリスキリングを成功させるプロセスを以下の5ステップに分けて説明。一連の流れを「リスキリングジャーニー」と名付けている。

 1.触れる・気づく
 2.調べる・知る
 3.理解する
 4.学ぶ
 5.新しい仕事で実践する

「学ぶ」という最重要事項が、工程の最初ではなく4番目に位置付けられているのが面白いポイントだ。

 まずはアンテナを広げて、マスメディアの記事や旅行先での体験、社内研修などを通じて、普段の担当業務とは異なる情報に「触れる」。そして「こんな仕事に取り組んでもいいかもしれない」と「気づく」。

 その上で、興味を持った仕事(テーマ)について「調べ」、新たな情報を「知り」、全体像を「理解する」。ここまで終えてはじめて、「学ぶ」フェーズに入る。そして知識が定着したら、業務で「実践して」いくのだ。

 ただし、各ステップの間には「関心の壁」「行動の壁」「手段と時間の壁」「活躍の壁」からなる「4つの壁」があるという。

「そもそもリスキリング自体に関心が持てない」「行動する決心がつかない」「どうやっていいかわからない、時間が取れない」「リスキリングを生かす場がない」といった壁が立ちはだかり、なかなか実行できないのだ。

 自分と向き合い、これらの壁を乗り越えていく作業が、まさしくジャーニー=長旅なのである。

 なお本書では、リスキリングの長旅に乗り出した、年代や職種がバラバラな6人のストーリーも描かれている。中には、新型コロナウイルス感染拡大を機に在宅勤務を始めた結果、最新のITツールを使いこなせないことにショックを受け、リスキリングを始めた40代男性のエピソードもある。

「ネタバレ」にならないよう詳細は伏せるが、本書でさまざまなケースに触れ、リスキリングを「自分事」として考えてみてはいかがだろうか。