コカ・コーラを日本一売った男に学ぶ
「商品の売り方」とは?

 こうした悩みを解決する一助になりそうな書籍が、『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』(講談社+α新書)だ。

夏休みに読みたい「ビジネス力&教養力」爆上げの3冊!書評のプロが選んだオススメ本とは?コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』(山岡 彰彦 著、講談社+α新書、税込990円)

 本書では、コカ・コーラのボトリング会社で営業マンとしてキャリアを積み重ねた著者が、現場での奮闘の日々と、そこから得た「学び」を語っている。

 著者の山岡彰彦氏は大学を卒業後、四国コカ・コーラ ボトリングに入社。そこから経験を重ね、日本コカ・コーラ主催の全国セールスフォースコンテストで第1位を獲得。それをきっかけに、日本コカ・コーラ本社への全国初の出向者になった。

 本書では、山岡氏が外回り営業で経験した成功や失敗が、飾らずごまかさずに描かれている。実際に関わった顧客とのエピソードがありありと描かれているほか、「名言」ともいえる言葉が次々に飛び出す。

 最初のキャリアで山岡氏が担当したのは、小売店を回るルートセールスだ。同氏は立板に水のごとくセールストークを繰り広げるタイプではない。「行動は言葉よりも雄弁だ」という諺(ことわざ)通りの営業スタイルで着実に顧客の信頼を得ていく。

 大きな転機になったのは、フードサービス部門への異動だ。同部門では、ファミリーレストランのドリンクバーに置いてあるような、お客のコップにドリンクを注ぐ機械(正式名称:ディスペンサー)を商材として扱っていた。

 これまで扱っていた缶やボトルとは全く異なる商材を任されたわけだが、山岡氏は上司からの「相手の都合から考える」という言葉を踏まえて、営業スタイルを進化させていく。

 具体的には、異動前の営業先だったレストランや喫茶店だけではなく、家具店や葬祭会館といった「人が多く集まり、長い時間滞在する場所」にディスペンサーを提案し、契約にこぎつけていったのだ。

 営業先の開拓にあたって、山岡氏は「いままでの延長線上で考えない」ことを実践。商談にこぎ着けた場合は、売り込むよりも「傾聴」を心がけたという。相手のニーズを聞き出して、「売るのではなく買っていただく」ためだ。

 そんな山岡氏が、営業に取り組む上でモットーとしていた言葉は「自分のアタマで考えて、相手の立場で行動する」。シンプルな言葉であり、簡単のようにも思えるが、われわれが現場で実践するのは意外と難しいものだ。それでも日々の業務で少しずつ意識すると、その積み重ねがいつしか大きな成果につながるかもしれない。