さて、それで冒頭の現象に戻ります。

 金融の専門家たちは8月5日の大暴落の日でも、全く心配をしていませんでした。テレビで発言をすると言質がとられるので立場上そう発言する人はあまりいませんが、心の中では大多数の人が「明日には戻すだろう」と思っていたはずです。そして実際にそうなったのですが、それがこの記事の本題です。

 専門家たちは株式市場の暴落を二つに分けてとらえています。心理的な暴落と、経済ショックです。

日銀総裁の方針変更は
すでに織り込み済みの話

 今回の暴落の報道で印象的だったのは、多くのメディアが1987年10月のブラックマンデーにこの大暴落をなぞらえていたことです。

 リーマンショックやコロナショックではなかったことが実はポイントなのです。というのも日本ではブラックマンデーは心理的要因で起きた暴落であり、比較的早く市場が回復した事件として記憶されています。

 株式の暴落にはこのような回復が早い心理的なものと、そうではない本格的な経済ショックがあります。日本の株式市場でいうと、後者にあたる本格的な株価崩壊にあたるのが1990年代のバブル崩壊、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、そして2020年のコロナショックでしょう。

 前者の暴落は業績とは関係なく起きるので、株価は戻りやすい傾向にあります。なにしろ価値が変わっていないのに価格だけバーゲン価格になるわけですから、買い手はすぐに表れます。ところが後者の暴落は経済の前提条件が変わったことが理由で、企業の業績も大きく崩します。ですから前者の場合の株価は比較的回復しやすい一方で、後者の株価は長期的なダメージを投資家に与えます。