ファンドマネージャーや機関投資家は
「会社のルール」に沿って損切りをする

 では次に、

「なぜこれだけ暴落したのに、その翌日には+3217円と大幅に株価は戻したのか?」
「なぜ専門家はこれだけの暴落にもかかわらず、全然うろたえていなかったのか?」

 を考えてみましょう。

 パニック売りと言う言葉が専門家の間からも出ましたが、そのパニック売りには、さっさと利益を確定した外国人投資家以外に3つの参加者が関係しています。

 まず最初にまっとうなファンドのファンドマネジャーがいます。投資のプロたちです。

 実はこのプロのひとたちは自分の判断でこの暴落を乗り切ることが禁止されています。投資家から資金を預かるときに設定されたリスクルールがあって、株価がある一定の水準を割ったら損切りをしなければいけないのです。

 ですから心の中で「今はパニックだな」と思っていても、彼らはルール通りに株を売却します。

 一般の投資信託でもそうですが、人気のインデックス連動型投資信託は、上げ下げよりもインデックスにぴったり連動することが求められます。そのため、日経平均が下がればあわててその先を予測して持っている株をしっかりと売っていきます。

 生命保険や損害保険などの機関投資家も同じです。運用しているのはプロとはいえ会社員のファンドマネジャーですから、会社のルール通りに市場が下げる局面では株を売ります。

 このメカニズムは投資の神様といわれるピーター・リンチというファンドマネジャーが強調していたことです。

 ほとんどの投資ファンドが、市場の平均であるインデックスファンドよりも成績が悪いという現象がある中で、ピーター・リンチのマゼランファンドは毎年、市場の倍の運用成績を続けていました。ピーターは「ルールの足かせがついているのに市場を上回っている」ことをむしろ誇りにしていて「個人だったらもっと勝てる」と話していたものです。