親とお金の話をするときに
絶対言ってはいけないNGワードとは?

 いずれにせよ、修一さんとしては、親がこれからのことをどう考えているのかも含め、早めに親の家計や資産状況を把握して、もし、老後の生活費や医療・介護のお金が足りなくなりそうなら、前もって準備や心積もりをしておきたい。

 そこで、昨年末のお正月に帰省した際、修一さんは、父親にこう切り出した。

「おやじさあ。おふくろもそうだけど、まだ元気でもいずれ、病気とか介護とかでお金かかる可能性もあるよね。家もだいぶ古くなってきたしさ。お金大丈夫なの? どれくらい持っているのか、ちょっと通帳見せてくれない?」

 修一さんのこの言葉に、お父様は憮然とした様子で、「大丈夫だ。お前に迷惑はかけん。通帳など見せる必要はない」とだけ言い残して、席を立ってしまった。

 これ以来、父親との仲がすっかり気まずくなってしまい、なんとなく、お金の話を持ち出すのはタブーのような感じだという。

 そこで、困り果てた修一さんは、FPである筆者のところに相談にお越しになったというわけだ。

 このような修一さんの状態をアドラー心理学では、「勇気のくじき」と呼ぶ。

 家族間では、よく見られるもので、これまでの家族のやり取りの中で、いつも否定的なことを言われたり、反応が薄かったりすると、徐々に勇気がくじかれ、「どうせ何を言ってもダメだ。聞いてくれない」と対話するのをあきらめてしまうパターンである。

 そして、まさに、修一さんの言葉にある「お金大丈夫?」「どれくらい持っている?」「通帳を見せて」は、親とお金の話をする際に、言ってはいけないNGワードだった。