歯医者「減少」時代#6Photo by Masami Usui

歯学部において私立大学と国公立大学は、どうすみ分けているのか。国公立、私立それぞれのライバル関係はどうなっているのか。特集『歯医者「減少」時代』(全26回)の#6では、全国29大学の歯学部について、学生の生態や大学の関係を明解に描いた。(ルートマップマガジン社取締役・編集長 西田浩史)

私立大の学生は歯科医院6代目も
国立大はサラリーマン家庭

 歯学部は私立大学なのか国公立大学なのかによって、学生の生態が異なる。

 私立大の歯学部生の典型は、開業歯科医を目指し、親も開業歯科医あるいは医師。親子代々で同じ大学に通い、歯科医院の5代目や6代目に当たる学生などもいる。同窓の関係から開業歯科医人脈も形成されていく。

 国公立大の歯学部生は親がサラリーマンであることが多い。6年間の学費を見ると、私立大では3000万円を超えるところがあるのに対し、国公立は約350万円。サラリーマンが子供を学費の高い私立大に通わせるのは金銭的なハードルが高い。後を継ぐ歯科医院がない国公立大歯学部生の典型的進路は大学勤務。大学病院で診療したり、研究者として論文執筆に精を出したりする。学内政治をこなし、研究成果を出せば、出世ルートに乗る。

 歯学部を持つ全国29大学のうち、私立は17大学で、東日本に多い。国公立は12大学で、西日本に多い。医学部のように国公立大が何でも優位なわけではなく、すみ分けされている。

 受験生の背景も私立大と国公立大とでは異なる。医学部に落ちた受験生が流れてくる私立大は医学部崩れ、浪人が多い。推薦入試でなんとなく入学する層もかなりの数に及ぶ。推薦組には学力が低い者も含まれ、入学者の上位と下位の学力に大きな差がある。彼らを歯科医師国家試験に合格させるために、授業、卒業認定共に厳しめだ。

 国公立大は総じてこの逆で、医学部崩れは少ない。一般選抜試験を突破してくるので、学力の差は小さい。授業は全体的に緩めだ。

東大と京大が君臨しない
国公立大歯学部のトップは?

 国公立大において他の学部と大きく異なるのは、東京大学と京都大学がトップに君臨していないということだ。

 なぜなら両大学には歯学部がない。

 それでは国公立大のトップはどこなのか。次ページでは、国公立12大学の勢力図、私立17大学のライバル関係を明解にする。