一つ目の「単位」は、話をする人数・グループに留意するということである。

 よくあるNGパターンは、お正月やお盆など、多くの家族が集まっているときに、ちょうど良いからと話を切り出してしまうケースだ。

 きょうだいが複数いる場合は、その配偶者なども一緒になって、「年金や預貯金はどれくらいある」「要介護状態になったら施設に入るのか」「相続についてはどうする」などなど、まるで、親が子どもから一方的に取り調べを受けるような様相を呈してしまう。

 親は子どもに責められているような気になるし、大勢で話し合うと、それぞれの思惑や意見が交錯して、まとまりのないものになりがちだ。

 そこで、子どもは、結婚して配偶者がいる場合、それぞれの親のこれからをどう考えているかを話し合う。続いて、きょうだいがいる場合、きょうだい間でなど、小さな「単位」で、ある程度、意見をすり合わせでおくのである。

 そして、親と話をするのは、子どもだけ。そして話の中心となるきょうだいを1人決めて、子どもの総意として、親に気持ちを伝えるようにしたい。もちろん、意見が分かれているなら、それを直接話せばよいだろう。

 二つ目の「タイミング」は、まさに、親に話を切り出す時期のこと。

 血縁のある親子や家族間であっても、「お金」の問題はとてもナーバスである。話し方はもちろん、どの時期に話をするかのタイミングは非常に重要だ。

 自宅で脳梗塞を発症し、救急車で急性期病院に運ばれたAさん(80代男性)は、意識が戻ったとたん、病院に駆けつけた子どもたちから「通帳はどこにある」「キャッシュカードの暗証番号は?」「家の権利書はどこだ」などとまくし立てられ、親の命が助かったことよりも、お金が大事かと情けなくて仕方なかったという。

 子どもの立場からすると、判断能力がなくなってしまったら大変!意識がしっかりしているうちにと焦ったのだろうが、確かに、病気などで心身が弱っているときに、話を切り出したのでは、財産を狙っていると勘繰られる可能性もある。

 親にお金の話をするタイミングは、まだ元気で、精神的にも身体的にも安定している状態のときにすべきだろう。ただ、そうなると、「そんな話をするのは早い」とはねつけられる場合もある。

 そこで、お勧めなのは、命に別状がないような、ちょっとした病気にかかって回復した後である。

 入院経験のある人であればお分かりだろうが、病院のベッドで一人寝ていると、もし万が一自分に何かあったらと、これからのことを色々と考えるものだ。

 これまでいくら元気でも、体調を崩したり、病気になったりして、親が子どもに伝えておかねば、という気持ちになってくれれば、話もスムーズに進む。