特集『夏だ!スキルだ!3日で絶対習得シリーズ2020』(全30回)における「統計学」(全6回)のその2では、ビジネス現場での活用法をストーリーで学んでいこう。主人公は販売低迷に悩む事務機器販売会社の若手社員。主人公と共に、よくあるデータ分析の間違いを理解しよう。
「売り上げ低迷の原因を突き止めろ!」
上司からの指令にさぁどうする?
■あらすじ
事務機器販売会社「オフィス・デイリー」はこの1年、販売低迷に悩まされている。営業部の若手社員、真板直は、部長からいきなり販売必達プロジェクトのリーダーに任命され、その原因を突き止め対策を立てようとデータと悪戦苦闘するうちに、統計学の面白さ、実用性に気付く。最初はデータを円グラフにすることしかできなかった社員が、先輩社員と統計学の達人、西内啓氏にビシビシ鍛えられながら、ビジネスで統計学を実践していく。
■登場人物・設定
◆真板 直(まいた・すなお)
入社3年目の営業部員。何かあるとすぐに「まいった」と弱音を吐く癖があるが、責任感が強く、任された仕事をやり遂げようとする努力家。理系で数字には強い。
◆向井未来(むかい・みらい)
入社8年目の営業部のエース。キャリア志向が強く「そんなんじゃだめよ」とすぐにだめ出しする癖がある。トレンドやファッションにも敏感な今どきの女性。
◆堂下裕三(どうした・ゆうぞう)
営業担当部長。面倒見が良く部下に慕われている。心配性で、「どうした?」が口癖。真板を何とか成長させようと気に掛けている。
◆オフィス・デイリー……事務機器販売会社。年商10億円、従業員70人の中小企業。取引先は約1000社、営業部員は30人。最近、売り上げの減少に悩んでいる。
ストーリーの中に出てくる企業名、人名は全て架空のものであり実在する企業や人物とは一切関係ありません
◇
「いったいどうした!」――。
事務機器販売会社「オフィス・デイリー」の営業部のフロアで、営業部長の堂下裕三が部下の真板直を問い詰めていた。この1年、同社は販売が伸び悩んでおり、今年度の目標達成に赤信号がともっていたからだ。
「まいったなあ」
いつもの口癖で真板がうっかりつぶやく。耳ざとくそれを聞き付けた堂下は「人ごとじゃない。真板、おまえをたった今から販売必達プロジェクトのリーダーに任命する。ここに営業日報のデータがある。2日後の取締役会で販売低迷の原因と対策をプレゼンしてくれ。頼んだぞ!」。
1分後、堂下からデータがメールで送られてきた。「どうすればいいんだ。まいったなあ」。またしてもつぶやく真板だった。
エクセルファイルを開くと、下図のように営業部のメンバーが毎日入力している日報のデータがずらりと並んでいる。
「やっぱりデータはグラフにして見える化すると分かりやすいよな」。理系出身で数字には強い真板は、初回の訪問事由ごとにデータを並べ替えていく。よし、できた。1時間後、ようやく下図のような円グラフを作ると、勇んで堂下の席に向かった。
「真板くん、そんなんじゃだめよ、だめだめ!」
隣席から真板の作業を見守っていた営業部の先輩社員の向井未来が、真板を引き留めていきなりだめ出しをしてきた。
1時間もかけて作った力作だっただけに、真板はショックを隠せない。そんな真板にお構いなく未来はこう言い放つ。
「初回の訪問事由をグラフにしたところで、何が分かるっていうの?こんなの部長に見せてご覧なさい。『それで、どうした』って突っ込まれるのがオチよ」
確かに未来の言う通りだった。このグラフからは今何が起きているかも、これから何をすべきかも見えてこない。
「まいったなあ」