とくに難しい計算は必要ありません。
 何がポイントなのかを見極めて、やわらかい頭で考えてみましょう。
 クリアしなくてはいけない「制限」に目を向けてみると、おのずと発想の転換がされるはずです。

前提となる「2つの行為」

 この問題には、いくつかの制限があります。
 1つは、「1人が持てる食料は4日分」という制限。
 砂漠の横断には6日かかるため、この時点で、自分だけの食料ではゴールできないことがわかります。つまり……

 食料を「もらう」という行為が必要だとわかります。

 食料をもらう相手は、当然、ポーターですね。
 ですが、食料を渡した人が途中で力尽きてしまうのも避けなくてはなりません。
「遭難者を出してはいけない」という、2つ目の制限があるからです。
 つまり食料を渡す人は……

 自分が引き返す分の食料を残しておく必要があります。

 ・1人が持てる食料は4日分→他の人から食料を「もらう」
 ・遭難者を出してはいけない→自分が引き返す分の食料を残す

 2つの制限から、この問題を解決するための方策が見えてきました。

ポーター「1人」で乗り切れるか?

 方策が見えたら、それによって解決するために必要なポーターの最少人数を仮定して考えていきましょう。
 たとえばポーター1人なら?

 ……これは無理です。
 6日間かかる行程を乗り切るには、あなたはポーターから2日分の食料を受け取る必要がありますが、あなたが持てる食料は4日分まで。
 2日分の食料を受け取るには、出発から2日が経たないといけませんが、その時点でポーターが持っている食料は残り2日分のみのため、それを受け取ると、ポーターがスタート地点まで引き返せなくなります。

ポーターが「2人」なら?

 次に、ポーターが2人の場合を考えてみましょう。
 あなた、ポーターA、ポーターBの3人で、それぞれ4日分の食料を持って出発します。すると1日目の夜には、それぞれが持っている食料はこうなります。

 1日目の夜(残り5日)
  あなた:3日分
  ポーターA:3日分
  ポーターB:3日分

 そこで、ポーターBはあなたとポーターAに食料を渡します。
 もちろんポーターBは、スタート地点に戻るための1日分の食料を残します。すると、こうなります。

 1日目の夜(残り5日)
  あなた:4日分
  ポーターA:4日分
  ポーターB:1日分

2日目の行動

 2日目、あなたとポーターAは出発します。
 そしてポーターBはスタート地点に戻ります。
 すると2日目の夜には、こうなります。

 2日目の夜(残り4日)
  あなた:3日分
  ポーターA:3日分

 ここで、ポーターAはあなたに「1日分」の食料を渡します。
 すると、こうなります。

 2日目の夜(残り4日)
  あなた:4日分
  ポーターA:2日分

 ポーターAの手元には「2日分」の食料が残るので、2日かけた行程を逆戻りして、スタート地点に戻ることができます。
 そしてあなたは4日分の食料があるため、ゴールまで辿り着けます。

<正解>

 2人

「思考」のまとめ

 前提となる「2つの制限」から、「食料をもらう」「引き返す分の食料を残す」という前提に気づけるかがポイントでした。
 変えられることと、変えられないこと。
 これを区別してみると、考えてもしかたがないことや、考えなくてはいけないポイントが見えてきます。
 制限は発想の源になると、教えてくれる問題でしたね。

 ・「絶対に押さえなくてはいけないポイント」がわかると、そのために必要なことや手段を柔軟な発想で考えられる

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。