菊酒9月9日には、日本酒に菊の花を浮かべた「菊酒」を飲み、長寿を願う

連日30℃を超える残暑、台風とゲリラ豪雨にさいなまれている京都ですが、夕暮れ時には涼やかな虫の音も響きわたるようになりました。長月は、五節句の一つ「重陽の節句」を満喫してみませんか。9月から開催される二つの注目展覧会も併せてご紹介します。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)

菊酒の接待も!9月9日限定のユニークな行事

 ひなまつり(3月3日)、こどもの日(5月5日)、七夕(7月7日)といった具合に、奇数が重なる月日には、季節の変わり目を祝う伝統的な行事が根付いています。9月9日は五節句の一つ、「重陽(ちょうよう)の節句」。何を祝う日なのか、少し印象が薄いかもしれません。皆さんはいつもどのように過ごしていますか?

 京都には、他では見られないユニークな重陽の節句に合わせたイベントがあります。まずご紹介したいのが、第13回「夏越の祓」でもご紹介した上賀茂神社(北区)で行われる「重陽神事と烏(からす)相撲」です。午前10時、本殿前に菊の花をお供えして、延命長寿や災難除けを祈願する厳かな神事が営まれた後、一対の盛り砂が立つ細殿の前にしつらえた土俵で、子どもたちによる奉納相撲「烏相撲」が10時45分頃から始まります。

 ご祭神の賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)の祖父神である賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)が、大きな八咫烏(やたがらす)の姿となって、東征に赴く神武天皇を導いたという逸話により、上賀茂神社では八咫烏が導きの神として信仰されているため、行事の名に「烏」が付くのです。

 注目したいのは、烏相撲が始まる前の儀式です。烏帽子(えぼし)をかぶり、白い装束をまとった2人の刀禰(とね)代が、弓矢を手に持ち、カラスが地面をちょんちょんと跳ねるような所作で横跳びをして立砂の前に向かいます。立砂の前に座ると、扇を振りながら、片方の刀禰代が「カーカーカー」、もう一方の刀禰代が「コーコーコー」とカラスの鳴きまねで呼応して、弓矢を立砂に立て掛けるのです。

 地元の小学生による真剣勝負の相撲は、涙あり笑いありで大盛り上がり。ほほえましい奉納行事です。相撲の奉納には悪霊退散の意味も込められており、平安時代には、歴代の斎王も烏相撲をご覧になったのだとか。「菊の節句」とも呼ばれる重陽の節句だけに、烏相撲の後、大人には「菊酒」の接待もあるのでお楽しみに。