デジタル給与導入の場合、社員は全員従わなくてはならない?

永田 「デジタル払いと言いますが、給与は本来、現金払いが原則でしたよね?」

カタリーナ 「ええ、ただし労働者が同意した場合は、預貯金口座や証券総合口座への賃金振り込みが認められているの。最近はキャッシュレス決済も普及してきたし、送金手段も多様化するニーズに対応するために、指定された資金移動業者の口座への賃金支払いが可能になったのよ」

永田 「じゃあ会社がやると決めたら、社員は従わなければならないと?」

カタリーナ 「いいえ。会社が一方的に決定できるわけじゃないの。デジタル払いを導入するには、まず事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、ない場合は労働者の過半数代表者と労使協定を締結する必要があるのよ」

永田 「そうなんですか。労使の話し合いが必要ってことですね」

カタリーナ 「労使協定を締結しても、全員がデジタル払いをする必要はないの。あくまでも賃金のデジタル払いを希望する人に対して実施できるわけ」

永田 「では、私が同意しなければ、これまでと同じ方法で給与が受け取れるってことですね」

カタリーナ 「ええ。雇用主は希望しない労働者にデジタル払いを強制することはできない。もし強制した場合は、労働基準法違反となって罰則の対象にもなり得るわ」

永田 「強制されないと聞いて、安心しましたよ」

預金をするための口座ではない

永田 「素朴な疑問ですが、デジタル化された給与をどうやって現金化するんですか?すべての店舗が電子マネーに対応しているわけでもありませんし、現金も必要ですよね」

カタリーナ 「ATMや銀行口座などへの出金により、口座残高を現金化することができるわ。少なくとも毎月1回は、労働者の手数料負担なくデジタル給与の口座から払い出しができるから安心して」

永田 「なるほど。給与の全額をデジタルマネーで受け取る人も出てくるのでしょうか?」

カタリーナ 「受け取りの上限額は本人があらかじめ決めて同意書を会社に提出するの。口座の残高上限額は100万円以下と決められているわ。PayPay給与受取の場合、残高上限額は20万円だそうよ。例えば、毎月の給与で受け取るデジタルマネーは5万円、残りはいつもの銀行口座という具合に」

永田 「上限額を超えたときは、どうなるのですか?」

カタリーナ 「そのときは、あらかじめ本人が指定した銀行口座などに自動送金されることになるの。知っておいてもらいたいのは、デジタル給与用の口座は『預金』をするためではなく、支払いや送金に使うためのものだということ。だから、支払いなどに使う見込み額を受け取るようにすることがポイントね」