導入には、サービス内容など検討を

永田 「なるほど。社員の選択肢が広がるのは悪いことではありません。ただ、デジタル払いと銀行振り込みを併用する人が増えれば、会社のコストも増えてしまうのではないでしょうか?」

カタリーナ 「会社のコストを軽減するための様々なサービスが出始めているみたい。今後、指定資金移動業者が増えてくれば、サービスも差別化されてくるはずだから検討してみて」

永田 「いずれにしても、我々の管理コストは増えそうだ」

カタリーナ 「まぁ、そうね。導入する指定資金移動業者のサービスの検討を始め、労使協定の締結や社員への説明、個別の同意取得、事務処理の確認など、やるべきことはいろいろあるわ。ただ、もう時代はキャッシュレスだから」

永田 「そうですね……。デジタル払いのメリット・デメリットあわせて、改めてしっかり検討してみます」

<カタリーナ先生からのワンポイント・アドバイス>
●賃金のデジタル払い(デジタル給与)は、賃金の支払い・受け取り方法の選択肢の一つ。労働者のみならず、使用者に対しても導入を強制するものではない。
●各事業場においてデジタル払いを導入する場合、(1)指定資金移動業者の確認、(2)導入する指定資金移動業者のサービスの検討、(3)労使協定の締結、(4)労働者への説明、(5)労働者の個別の同意取得、(6)賃金支払いの事務処理の確認・実施などが必要となる。
●デジタル払いを導入した事業所においても、すべての社員が必須となるわけではなく、社員が希望しない場合はこれまで通りに銀行口座などで賃金を受け取ることができる。
●現金化できないポイントや仮想通貨での賃金支払いは認められない。
●労使協定締結後、賃金のデジタル払いを希望する労働者への説明は、雇用主から指定資金移動業者に委託することができる。
●万一、指定資金移動業者が破綻した場合、賃金受け取りに用いる口座の残高が保証機関から速やかに弁済される。弁済方法は資金移動業者ごとに異なる。

※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)