10年連続で算数オリンピック入賞者を輩出している彦根市発の知る人ぞ知る塾「りんご塾」。天才を生み出すそのユニークな教育メソッドを、塾長の田邉亨氏が初公開した書籍『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(ダイヤモンド社刊)が、このたび発売になった。本書を抜粋しながら、家庭でも取り入れられるそのノウハウを紹介する。
子どもは無理をしても頑張ろうとする
子どもは、お母さん、お父さんのことが大好きなので、親が喜んでくれることは多少無理をしてでも頑張ろうとします。
だから私は、子どもの才能を見るのはもちろん、親がやらせすぎていないかどうかも気にするようにしています。
例えば、りんご塾では先取り学習を取り入れているので、優秀な子は、どんどん上の学年の勉強に進んでいきます。
そうすると、親は嬉しいですよね。「これができるなら、こっちもできるだろう」と思って、「もっと上」を望みます。掛け算ができたら、割り算はそれの逆だからすぐにできるだろう、というように。でも、それはまた全然違います。掛け算ができても、割り算を理解するのに時間がかかる子もいます。進度というのは、子どもの習熟度や経験値、感性など、様々なことが絡み合っているのです。
そういうことを無視して、親が前のめりになると、子どもはどんどん疲弊していきます。勉強から逃げよう逃げようとしていきます。
親がやらせすぎのサインとは?
親がやらせすぎていることがわかる典型的なサインは、解答用紙に×をつけられるのを異様に嫌がることが挙げられます。
採点をするときに、間違っているので×をつけると「うわー!」と泣き叫んだり、紙をビリビリに破ったりすることがあるのです。これは、昔勤めていた塾でよく見た光景なのですが、とにかく間違ったことを隠滅したがるわけです。
きっと、×が多いと家で相当怒られるのでしょう。わからないことがあって、それを教えてもらうために塾に来ているのだから、間違うのは当たり前です。それなのに、塾でわからないところがあったら怒り狂うというのはおかしな話ですし、子どもは非常に窮屈だと思います。
こういう、前のめりになっている親御さんは、とにかく量でカバーしようとする傾向もあります。
「宿題をたくさんください」とおっしゃるので、準備をしながら雑談をしていると、「この問題集も家でやってます。あっちの問題集もやってます」という感じで、与える量が非常に多い。
また、一度始めたことを途中でやめてはいけないと思っていらっしゃるきらいもあります。習い事をたくさんして、子どもの適性を探るのはとてもいいことなのですが、合わないと思っても途中でやめません。「途中でやめたら投げ出しグセがつくので」と言って、週に10個ぐらい習い事をさせているご家庭もありました。
「もう少し絞ったほうがいいのでは?」とお伝えしても、うちはしょせん、10個のうちの1個なので、聞く耳を持っていただけません。
そうやって、教育熱心の度が過ぎると、ひどい場合は子どもにチック症状が出ます。チック症状というのは、意図せず起こってしまう素早い体の動きや発声のこと。根本的な原因はまだ解明されていないそうですが、不安や緊張などの精神的ストレスが原因となることが多いと言われています。
小さいうちに子どもの可能性を探り、最大限伸ばしてあげることは、たしかに大事です。しかし、負荷をかけすぎて、可能性をつぶさないように気をつけましょう。
*本記事は、『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(田邉亨著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。