「好きなこと」「得意なこと」を掛け合わせると
「オリジナリティ」が生まれる
神武 そうですね、多くの人や機会に関われるように「自分の壁」をできる限り低くするよう心がけています。お話をいただくということは、自分の存在意義を認めてもらったようでうれしいです。ですので、まずはいったん、すべてのみ込んでみる。そしてそこから考えます。最近は毎月、海外出張をしていますから、のみ込むことの多様性がとても広がっている気がします。
山崎 やってみなくてはわからないことは多いですよね。
神武 フェイル(Fail)ファースト(Fast)というか、失敗は成功へとつながっているので、失敗を恐れないようにしています。
小学生や中学生でも、将来何をやっていいかわからないとか、何を目標に生きていけばいいのか、と未来に対する不安を口にする子どもが、けっこう多いんです。
そういうとき、「『好きなこと』と『得意なこと』をまず書いてみましょう、それを掛け合わせてやってみると、あなたらしいことができると思いますよ」と伝えています。別に一番になる必要もないですし、オンリーワンになる必要もなくて、自分自身がそれを楽しめれば、まずはいいと思います。
でも、好きなことと得意なことを掛け合わせると、その人のオリジナリティが出てきますし、やり続けるエネルギーが湧いてくることが多いと思います。これはビジネスパーソンのキャリア形成にもいえることで、何かを始めるときに、一歩踏み出すきっかけになると思っています。
私も、「好きなこと」であるスポーツと「得意なこと」である宇宙開発の技術を掛け合わせ、GPSを活用した、スポーツチームや選手のコンディションマネジメントの研究をしています。スポーツの分野での経験を活かして、畜産農家や農学を専門とする方々と、放牧牛のコンディションマネジメントの研究を行ったりもしています。
最初は自分には縁遠いことだと思っていても、人とのコミュニケーションを大切にしていれば、キャリアにつながることもあり、とても面白いですね。
山崎さんは、もし人生をやり直せたとしたら、「ここを変えたかった」というような、キャリアの局面はありましたか。
「どの道を選ぶか」よりも
「どのように歩くか」が重要
山崎 そうですね、私の学生時代には、学生が人工衛星を造るなどということは考えもつきませんでした。いまは、高校生も人工衛星の開発に挑戦していたりしますよね。なので、もしやり直せるのであれば、学生時代に人工衛星のような、ものづくりをもっとしたかったなと思います。
神武 やはり宇宙に関わりたいという思いは強いのですね。ご自身のキャリアについて悩んでいる方は多いと思います。そうした方々へ、メッセージをいただけますか。
山崎 いろいろな選択肢があるとき、「この道を選べば正解」ということはないと思うんです。「どの道を選ぶか」よりも、「どのように歩くか」に主眼を置いていて、常に、選んだ道を正解にしてく努力をすることが大切なんだと思います。ただ、自分自身がどこを目指したいのか、その目標は見失わないでほしいです。
自分の目標がチームの目標と重なったとき、大きな相乗効果を生むはずです。自分が所属する組織のビッグピクチャーを持ちつつ、自分の立ち位置を見つけていく。航海で、水平線を見ながら自分の位置を決めていくように。そうすれば、選択肢の多さは迷いではなく、希望になると思います。ご覧になっている皆さんの前途が開かれることをお祈りしています。
神武 私たちは、JAXAの先輩・後輩ということもあり、これまで何度かお話しさせていただいていますが、今回のような「キャリア自律」というテーマでお話しすると、また新しい発見がありました。ありがとうございました。
山崎 こちらこそ、ありがとうございました。