資格を取ってキャリアはどう変わったか
社労士の肩書があるからできたことも

 試験に合格した際は社労士とは全く関係のない仕事に就いていました。しかし、せっかく苦労して取得した資格です。なにか生かせる方法はないかと考え、転職サイトに登録しました。

 運よく、それがきっかけで生命保険会社にファイナンシャルプランナーとして転職できました。その後、社会保険労務士事務所(法人)に転職し、今に至ります。

 実際、社労士の実務を始めてからのほうが、合格までの勉強よりも大変でした。私自身、総務や人事、法務部で働いた経験がなく、労働保険・社会保険の加入手続きなどの実務経験はありませんでした。それに加え、社労士試験の科目にはなかった雇用関係の助成金の代行業務についても、ゼロから覚えなければなりません。勤務時間外の週末なども使って勉強する必要がありました。

 会社員時代と比較して給料は少し上がりましたが、勉強時間も加えて時給を割り出すと、むしろ下がったかもしれません。しかし、「おかげさまで助成金が支給された」「必要書類をしっかりと整えてくれたので労働局の指摘が何も入らなかった」といった言葉をクライアントからかけられることも多く、“やりがい”は会社員時代よりも感じています。

 また、やりがい以外にも、社労士試験に合格しなければ、経験できなかっただろうことがありました。著者として何冊か本を出したり、セミナー講師として登壇させていただいたりしたことです。

 自分が書いた本が書店に並ぶ、講師として数十人の前で話すなどということは、会社員時代には想像もつかなかったことでした。社労士という肩書があったため、機会を与えられたものだと思います。

 実務をする上で資格の有無は関係がないと主張する人もいますし、実際にそのことは正しいかもしれません。しかし、著者やセミナー講師といった情報発信者として活動する際には、資格はあったほうが有利。「総務一筋、各種の手続きに精通した課長」よりも、「人事労務の専門家である社会保険労務士」のほうが説得力はあるはずです。