アルバイトが知り得ることを書いたとしても
懲戒解雇にはできない

 守秘義務を守れ、と言い続けたユニクロだが、アルバイトの日々の業務内容を綴った週刊誌記事を書いても、懲戒解雇にはできないのだ。

 諭旨退職というのは、雇用主が従業員を説得して、雇用契約を終了させるもの。退職金や給与、賞与などの支払い面では自主退職と同じだ。

 私の場合、辞めさせられなければ働くはずだった12月の給与にあたる10万円強が、働いていないのにもかかわらずユニクロから振り込まれた。なぜ働いていないのに給与が支払われたかといえば、労働基準法に、雇用主の都合で従業員を解雇する場合、30日前に予告をするか、30日分の平均給与を支払う必要がある、と定められているからだ。

 それに対し、懲戒解雇とは、従業員が重大な違反行為を起こした場合の雇用契約の打ち切りを指す。30日分の給与も退職金も、支払われない。懲罰的な意味合いが非常に濃くなる。

 ユニクロの経営トップとしては、できることなら私を懲戒解雇に処したかっただろう。しかし、アルバイトが知り得ることを雑誌に書いたとしても、懲戒解雇にはできない。

 この場合、諭旨退職も適法なのか。これは不当解雇にあたるのではないか、という疑問が残るのだ。だが、もともと働き続ける意図がないのに、不当解雇を争うために裁判を起こすのは潜入取材の趣旨からずれてしまうので、ここではそれ以上追及するのを諦めた。

 企業秘密の漏洩が問われるのは、どういう事例だろうか。

 その教科書的な事件が起きた。