中国人を激怒させた三つの「最」

 今回の試合は、なぜここまで中国人を失望させ、激怒させたのか。その理由は、三つの「最」があったからだと思われる。三つとは、

・ワールドカップ予選での中国の最多失点記録
・ワールドカップ予選での日本の最大得点記録
・中日両国の対戦史上、最大得点差を更新したこと(それまでは最大2点差だった)

 のことだ。

 さらにはもう一つ、1998年に中国が日本に勝利して以来、25年間勝利から遠ざかっていたことも背景にある。中国のサッカーファンからしてみれば、繰り返し国民の期待を裏切り、いくら罵声を浴びせられてもいっこうに強くならない中国代表チームは、非常にふがいなく腹立たしい存在ということになる。

2015年から約10年お金をかけて強化してきたはずが……

 中国サッカーの弱さの要因として、これまで「人材育成システムの欠如」が指摘されてきた。日本のように子どもの頃からサッカーが身近な存在で、高校や大学にサッカー部やサークルがある環境ではないから、ということだ。オリンピック選手は小さいときに選抜されて、組織的な厳しいトレーニングを受けて成長する。サッカーのような大衆スポーツの基礎は、非常に弱いのだ。また、一人っ子政策が長く、今も少子化が進む中国では、親は子どもの教育や受験には熱心だが、子どもがサッカー選手になるようお金をかけて育てる親はほとんどいない。

 熱烈なサッカーファンとして知られる習近平国家主席が自ら指揮を執り、「サッカー強国」を構築するべく、2015年には「中国サッカー改革発展全体法案」という改革案が国務院(日本の内閣に相当)で審議・採択された。国を挙げて、大量のお金や人員を投じて中国サッカー再生を目指していたが、あまり効果はなかった。むしろ、国有企業のような体質を助長し、汚職や八百長などの問題を生み出したという指摘もある。特にここ数年は、贈収賄などの違法行為が次から次へと摘発されて、中国サッカー協会の幹部など約10人が汚職などの疑いで逮捕されているほどだ。

 こうした腐敗にまみれた中国サッカーの実態に対し、中国国民は不満が溜まりに溜まっていた。そこに今回の惨敗が引き金となって、中国サッカーへの不満を爆発させたのだ。