しかし、そんな計画は普段から危機感を県庁が持っていなければ、すぐに実践できるものではありません。かといって、特別な能力のある人物を復興のために緊急にスカウトした形跡もありません。一つだけ、石川県独特の本格的戸建ての仮設住宅建設案がありました。小さな集落の維持を目的として、「ふるさと回帰型」の石川モデルの木造建設をつくるプロジェクトが知事の肝入りで始まりましたが、プレハブ型着工数5169、木造長屋式1547に対して石川モデルは29戸、わずか0.4%で完全に看板倒れでした。

 この方式をメインにするなら、住民の長期間にわたる退避や大規模な予算の確保が不可欠でしたが、単なる思いつきに過ぎなかったようです。その間、知事は何をしていたかというと、8月の現地視察は4回だけ。なんと白山に登るという計画まで立てていました。

大阪・関西万博に予算を使い
避難民に対しては失言ばかり

 また前述のように、復興に全力をあげるため、私は大阪・関西万博の延期も提案しました。地元や経済界からも同様の声があがっていたのに、当事者である知事本人は合計3500万円もの予算までつけて大阪・関西万博に参加する気です。復興にお金がいるのに、万博に県の予算を使うというのだから、助ける側の国も緊急性を感じるはずがありません。

 その上、1月後半にようやく金沢などのホテルに住めることになった避難民について、北陸新幹線が
3月16日に県内で全線開業することを踏まえ、旅館やホテルなどにいつまで避難所として利用できるか期限を示すよう、知事が要請したと報道されました(NHK 1月30日)。また、7月25日に行った被災地応援に駆けつけている県職員への訓示の中で、「自宅にも戻れない、障害のある方など、所得の低い人が一次避難所で滞留している。この方々をいかに支えていくかも、私どもの使命」と暴言を発しました。23日時点でまだ一次避難所は61カ所あり、761人が身を寄せていたことを考えても、知事失格、いや人間失格と言わざるを得ない発言でしょう。

 さらに、地元の情報を全然把握していないことも露呈しました。22日に開かれた県の災害対策本部長会議にオンライン参加した輪島市の坂口茂市長が、「孤立集落にヘリと陸送で合わせて入ると言っていた物資が、一切入っていない。情報もない。急いで救助をお願いしたい」「輪島の28カ所の避難所に730人が身を寄せ、ざこ寝状態。学校も床上浸水して使えないことも多く、授業もあって、全部を避難所には使えない。快適な受け入れなど不可能なので、ホテルの手配をお願いしたい」と語ったところ、馳知事は「物資が届いていないことを、私も初めて聞いて驚いた」と発言。記者たちを呆れさせました。