ある時期から、自分でコントロールできる範囲はほぼないとわかったというか、自分ではまったくコントロールできない要素が99.9%で、自分がコントロールしているのは0.1%に過ぎないと感じるようになりました。
それは本の発売後も含めてです。沢山の人に読んでいただけるかどうかって、本当に、本そのもの以外のあらゆる要素に左右されるんですよね。時流はもちろん、その前に話題になった本とか、とにかくコントロールできない部分から色んな影響を受ける。
自分ができることを頑張るという姿勢は当然大事なんですけど、でも「書き出しが〜」と悩んでいたって、とりあえず書き終えない限りは読者に届けることもできないわけです。そして届けたあとはもう、書き出しがどうであっても、読者の体調や精神的な状況次第で本の感想も変わります。だから私の場合は、書けないと悩むより、どんなものでもいいからとりあえず最後まで書く、そのあとは運次第、くらいの気持ちでいます。
――読者に委ねざるを得ないということですね。
本当に心から、委ねざるを得ないんだよなあ、と思います。こっちが何を言ってもしょうがないというか。自分でコントロールしようという気持ちを手放せば、書き出す前の悩みはほとんど消えてくれる気がします、私の場合は。
開き直ってしまえば、悩まない
書き出せば、文章の神様がサービスしてくれる
――書き始めてからはいかがですか。
書き始めたらもう悩むより一回最後まで書いちゃいます。もちろん、物語の構造的にここが変、みたいなところで悩むこともありますが、それも突破口を見つけるしかないですし、とにかく一度最後まで書くということを最優先にしています。
表現に関しても、ひとつずつ悩むというよりは、とりあえず書いて、推敲するときにどんどん直していきます。書くことって減点法というか、頭の中の理想をどんどん裏切っていく作業でもあるんですけど、0点とかマイナスになってしまってもそれでもとにかく最後まで書きます。
それに、書き出してしまえば、なんだか文章の中でいいことが起きるんですよ。あまりうまくいかないなと思っていた箇所が意外とスルッと書けたりとか。