富裕層の海外シフトが進む理由(3)
コロナ終息と海外移動の再開

 そして、3つ目の理由として、新型コロナウイルス感染拡大に伴う厳しい移動制限が緩和され、海外への移住や長期滞在が再び容易になっていることが挙げられます。

 ビザなしで滞在できる期間は限られていますが、投資家ビザや永住権を取得すれば、より柔軟なライフスタイルを実現することが可能です。ハワイのトランプタワーやザ・リッツ・カールトンのコンドミニアム保有は“超富裕層あるある”ですが、今後は不動産だけではなく永住権取得に動く富裕層も増えると考えています。

富裕層の海外シフトが進む理由(4)
「言語の壁」崩壊

 従来、日本人富裕層が海外移住をためらう理由の一つとして、「言語の壁」が挙げられてきました。しかし、テクノロジーの進化により、この問題も劇的に軽減されています。翻訳AIや音声認識技術の向上により、英語を含む多言語でのコミュニケーションが容易になり、海外生活が現実的な選択肢となってきているのです。

 さらに、現在は多くの日本企業が海外に進出しているため、日本人の駐在員などに向けた高度な日本食材も20年前と比べてはるかに手にしやすい状況になっています。シンガポールでは、「DON DON DONKI(ドンドンドンキ)」の店舗が急増しているといいます。

 また、当時は海外から日本に電話するのも一苦労で、かつ多額の電話代がかかりました。しかし、今はLINE電話などのアプリによって海外からも無料で通話ができてしまう状況です。

 コロナ禍を経てリモートワークが一般化した今、経営層でかつ標準化が図れている業務や会社であれば、社長は原則海外にいてオンラインでやりとりをし、たまに日本に戻ってくるという働き方が可能になってきています。

 このように、テクノロジーの進化によって、富裕層にとっての海外移住や拠点づくりのハードルは下がってきています。今後は言語の壁を感じることなく、海外での生活やビジネス展開が可能になるでしょう。