大学格差#13Photo:PIXTA

2025年度入試から大学入学共通テストの難化が進む一方、首都圏の私立大学で基礎学力テストだけの「年内学力入試」が始まる。これらによって地方国公立大学は受験生集めが一層厳しくなり、難関国公立大との格差がさらに広がる。受験生にとっては、合格するチャンスが増えるということだ。特集『大学格差』(全20回予定)の#13では、この格差の実態に迫り、併せて、全国56国公立大について43年間の偏差値の推移早見表を掲載する。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美、ルートマップマガジン社取締役・編集長 西田浩史)

新課程入試と年内学力入試が
地方国公立大の首を絞める

 2025年4月の入学者を選抜する25年度入試を機に、地方国公立大学はどんどん受験生集めが厳しくなる。受験生にとっては、合格するチャンスが増えるということだ。

 25年度入試から大学入学共通テストで「新課程入試」が始まる。高校で22年度から始まった新課程(新しい学習指導要領)に対応して新教科の「情報」も加わり、従来の6教科30科目から7教科21科目に再編される。端的に言えば共通テストにおいて試験内容の難化が進む(下表参照)。

  対照的なのが、同じタイミングで東洋大学がスタートする「年内学力入試」である。これは基礎学力テスト2教科だけで年内に受験できるもの。関西ではすでに学力中位の中堅私立大学を中心に定着しており、首都圏でも25年度を皮切りに26年度以降に中堅クラスなどで導入ラッシュが起こることが必至だ(本特集#6『東洋大が仕掛ける「年内学力入試」日東駒専・成成明学獨國武・MARCHの参戦は?【首都圏45私大43年間の偏差値推移】』参照)。

 また、26年度には共通テストがオンライン出願に移行する。これまで高校が出願書類などを取りまとめていたが、今後は受験生個人が手続きをすることになる。

 一連の変化が地方国公立大の首を絞める。難関・準難関の国公立大を狙う学力優秀層の受験生は、今まで通りしのぎを削り続けるだろう。しかし、それ以外の地方国公立大においては、学力中位層の受験生が難化する共通テストを避けたがり、個人出願によって高校側が生徒に出願を促すパワーも落ちていく。年内学力入試という軽量化された学力試験の選択肢が加わって、首都圏からの地方国公立大の受験生はますます減り、それどころか地方から首都圏に流れていく。

 ルートマップマガジン社が首都圏135塾に実施したヒアリング調査で「北関東の国公立大に合格できる学力を持ち、年内入試で東洋大に合格した塾生における進学先の予想」についてたずねたところ、回答者の62%は「そのまま東洋大学に進学し、北関東の国公立大は受験しない」と予想している。

 中堅受験クラスの共通テスト離れと国公立大離れ。これが25年度入試以降に起こり得ることだ。では実際に25年度入試の受験生はどのような動きを見せているのか。

「情報」に負担感
公立や私立志望に

 24年度入試を振り返ると「国立大の志願者数が増えて、公立大が減った」と駿台予備学校入試情報室の城田高士室長。「共通テストの平均点がアップしたため、高い点数を求められる国立大へ強気に出願した」のだ。25年度入試については、夏の模試の時点では「公立大へ早めに流れ始めている印象」という。国立大のほとんどで情報が必須科目なのに対し、公立大で必須としているのは半数以下。「情報に対する不安感、負担感があるのではないか」と城田氏は考察する。

 ベネッセコーポレーション教育情報センターの谷本祐一郎センター長も、今夏の模試の時点で「情報をしんどいと感じる学生の一定数が私立大志望へ流れている」と分析する。

 共通テストで勝負する学力優秀層とそれ以外へと受験生の二極化が進むにつれ、難関国立大(東京大学、京都大学、北海道大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学、東京科学大学、一橋大学、神戸大学)とそれ以外の地方国公立大との間で格差は広がっていく。もっとも、格差そのものはすでに表面化している。

 次ページでは、47都道府県それぞれの代表的な国立大について、直近と10年前の偏差値および志願倍率を比較する。また、「難関国立10大学」「ブロック大10大学」以外の全国56国公立大について、43年間の偏差値の推移早見表を掲載する(難関国立大の43年間の偏差値の推移早見表は、本特集#1『旧帝大に、偏差値50台前半の受験者の2割が合格していた!知られざる「本当の合格率」大公開【難関国立10大学43年間の偏差値推移】』参照)。