しかし、ヤミ金、オレオレ詐欺、反社会勢力など犯罪グループ当事者らに実際に取材をした経験のある立場から言わせていただくと、これでは強盗などの犯罪に関わる若者が減ることはないだろう。

 犯罪グループというのは世間が思っているよりもずっと賢い。警察やメディアが「こういう手口です」と注意喚起をしているときにはすでにその抜け穴となるような手口で、悪事を働いているものだ。

「SNSでのバイト募集が危ない」という認識が世の中に広まれば、今度はその「抜け穴」として現実世界からの勧誘に力を入れる可能性は高い。

 例えば、建設作業、交通量調査などお金に困っている若者がたくさんいそうなところに人を送り込んで、「知り合いが超高額バイトを紹介してくれたけど人が足りなくて一緒にやらないか?」なんて声をかけていくのだ。

 もちろん、この勧誘役も闇バイトであることは言うまでもない。個人情報を握られ、「家族を殺すぞ」なんて脅されている若者ならば死に物狂いで仲間を集めるだろう。

 誘われた側も警戒心なく行ってしまうかもしれない。警察やマスコミが注意喚起をしているのは、もっぱらSNSでの高額バイトだ。目の前にいる人間、しかも短期間とはいえ一緒に働いた「仲間」が、そんな悪の道へと引きずりこむわけがないと思ってしまうだろう。

 このように闇ビジネスというものは基本的に“いたちごっこ”である。善良な人たちは、規制や監視を厳しくすれば「闇」は消滅すると考えがちだが実はまったく逆だ。どこかに明るい光が当てられれば、それにともなって別の場所に新たな「闇」が生まれる。そこを抜け穴に新たな闇ビジネスモデルが組み立てられるだけなのだ。