日本は景気が悪いから、安く見られてるってことですか

吉田:なんでそんなに金利が違うんですか。

アカツキ:日本では、景気をよくするために企業や個人がお金を借りやすくしようと、日本銀行が金利を低くする政策をとり続けてきた。一方で米国では、高くなっている物価を抑えようと、金利を上げてきた。日米が真逆の方向に進んだから、金利差が広がったんだ。

吉田:日本は景気が悪いから、安く見られてるってことですか。

アカツキ:意外に鋭いな。確かに、円が売られるのは目先の金利差だけが原因ではなく、長期的に見て日本経済の国際競争力が落ちていることが背景にあるという指摘もある。

【「鷹の爪」吉田くんが聞く】円安って結局、いいやつなんですか悪いやつなんですか?

待て待て、円安は悪いことばかりでもないんだ

吉田:くそー、円安めー。とっちめてやる!

アカツキ:待て待て、円安は悪いことばかりでもないんだ。たとえば日本で作った100万円の車をアメリカで売るとすると、1ドル=100円なら1台1万ドルだが、1ドル110円なら約9000ドルで売れる。日本から輸出したモノの値段が下がるので、売りやすくなるんだ。だから、円安になると自動車、電機など輸出が多い大手企業の業績はよくなりやすい。逆に、1ドル=79円台まで円高が進んだ2011~2012年ごろには、これらの輸出企業が大打撃を受けたんだ。それから、日本を訪れる外国人にとっては円安になれば日本でモノが安く買えるから、海外からの観光客が増えるという効果もある

吉田:確かに観光地に外国人が溢れてるっていうニュース、毎日のように見ますもんね。結局のところ、円安はいいやつなんですか、悪いやつなんですか。

アカツキ:為替の影響を避けるため、大手メーカーは近年、海外に工場を移している例が多い。その結果、昔に比べると円安になってもメリットは小さいといわれている。また、あまりにも急激に円安が進むと、輸入に頼っている食料品やガソリンなどの値段が上がって家計への影響が大きすぎる。だから政府は、急激な円安は経済に悪影響を与えると考えているんだ。

何か円安をやっつける秘密兵器はないんですか

吉田:じゃあやっぱり何とかしなきゃいけないじゃないですか! 何か円安をやっつける秘密兵器はないんですか

アカツキ:急激な為替の変化に対応する奥の手として「為替介入」がある。円安局面の場合、日本政府が自ら、貯めておいたドルを大量に売って円を買うことで円の価値を引き上げるんだ。ただ、円高になれば今度はアメリカ側に影響が出てしまうので、アメリカとの関係を悪化させることにもなりかねない。1ドル=160円を突破していた2024年の4~5月と6~7月には立て続けに計15兆円超の介入を行ったが、これは極めて異例だ。その前にあった2022年の介入は前回から24年も間が空いていたので、今回は日本政府がかなり危機感を持っていたことがわかる。

吉田:24年ぶり、そして2年ぶりかぁ。めったに使えない秘密兵器じゃ意味が無いですね。

アカツキ:そうとも言えないんだ。実際に為替介入を行わなくても、「介入があるかも」と投資家を警戒させるだけでも、円安の進行を食い止める効果はある。警戒心をあおるため財務省の高官が報道陣に「スタンバイ(いつでも介入できる状態)だ」と伝えるなどして、介入に近い効果を狙う「口先介入」といったテクニックが使われることもある。

吉田:いちいちぼくに口先介入してくる先輩と一緒ですね。

アカツキ:それは吉田がいつもいつも昼寝してるからだ。さっさと仕事しろ。

※本稿は『「鷹の爪」の吉田くんが聞く!経済ニュースと時事用語がめちゃくちゃわかる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

※吉田くんとアカツキ先輩が活躍中のアニメ連載「そもそも?知りたい吉田くん」は朝日新聞デジタルで読むことができます。