産後鬱の原因のひとつは、母親が3歳児神話に縛られて、24時間365日、赤ちゃんとずっと2人きりでいるからです。3歳児神話をかたくなに信じて、「保育園に預けてはいけない」と論ずる人に、僕はこう聞くようにしています。

「あなたは上司と2人きりで、マンションの一室にこもって仕事をしたいですか?」。

 答えは明らかです。嫌に決まっています。育児も介護も集団で行っていたのが、ホモ・サピエンスのファクトです。

「子どもを保育園に預ける」は
健全で正しい選択

「介護は家族が担うもの」「育児は母親が担うもの」などといった戦後日本の一部で見られた家族観は、ホモ・サピエンスの原理・原則に明らかに反しています。

 これは、戦後の日本が製造業の工場モデルに過剰適応して、「男は仕事、女は家庭」という性分業を推進したことが主因です。性分業を推進するための制度である「配偶者控除」や「第3号被保険者」が女性の意識を変えました。

 加えて、男尊女卑の朱子学に教導された明治以来の国民国家観(日本人は天皇の赤子である。天皇制・家父長制をコアとした国民の創出)が基盤にあったので、なおさらでした。

 しかしヒトという種にとっては、「子どもを保育園に預ける」ほうが健全で正しい選択なのです。