ホモ・サピエンスが定住生活をはじめたのは、およそ1万3000年前からです。それ以前の人類は、狩猟と採集によって食料を調達しながら、アフリカからユーラシア大陸→北アメリカ大陸→南アメリカ大陸と移動生活を続けました。人類が世界中に広まったこの旅は、「グレート・ジャーニー」と呼ばれています。

 連合王国(イギリス)の人類学者ロビン・ダンバーの研究によると、人間社会の基礎単位「ダンバー数」(安定的な社会関係を維持できる人数の上限)は150人程度とされ、ホモ・サピエンスは、150人規模の集団生活を約19万年にわたって営んでいたと考えられています。

 きれいな泉が湧いているなどキャンプに適した場所が見つかると、男も女も森に入っていき狩猟・採集をして、シカを獲とったりハチミツや薬草などを採る。その間、ケガをした人や高齢者が赤ちゃんを集めて集団保育を行う。働ける者が働き、子どもはみんなで面倒を見る。

 それがホモ・サピエンスの原初の姿でした。

 つまりホモ・サピエンスは、約19万年にわたって集団保育で社会性を獲得してきたのです。