スポティファイ好調、利益率も会員数もPhoto:Avid Photographer. Travel the world to capture moments and beautiful photos. Sony Alpha User/gettyimages

 コンサートのチケットが1枚1000ドル(約15万5000円)もする時代に、月額料金12ドルで聴き放題の音楽配信サービスなど安いものだ。

 スウェーデンの音楽配信サービス大手スポティファイの株価が最近急騰しているのには、この理屈が一役買っている。メディアやストリーミング業界の他社はもちろん、一部の人気AI銘柄をも上回る上昇率を見せている。株価は年初から7-9月期(第3四半期)決算を発表した12日までに123%上昇し、2年前の5倍になった。投資家の見立ては単純だ。有料音楽配信市場におけるスポティファイの優位性は高まる一方で、さらなる値上げの余地がある、というものだ。

 スポティファイは12日、近く値上げする方針は示唆しなかった。だが7-9月期の業績と10-12月期(第4四半期)の同社予想からは、収益性重視という最近の姿勢が引き続き奏功していることが分かる。7-9月期の粗利益率は31.1%と、アナリスト予想を1ポイント近く上回り、過去2年間の四半期平均(25%)を大きく上回る過去最高を記録した。10-12月期の同社予想に基づく2024年通期の粗利益率は、初めて30%を超える見通しだ。

 粗利益率は、収益の70%以上をレコード会社に支払う音楽配信業者にとって特に重要だ。だがスポティファイは財務改善を図ってきた。採用を絞り、従業員数は最も多かった2022年末の1万人超から29%減った。改善策が奏功し、同社予想に基づくと、今年の年間営業損益は14億ユーロ(約2300億円)近い黒字となる見通しだ。これまで黒字は一度だけで、それも小幅にとどまった。