「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では著者の萩原礼紀によるオリジナル記事をお届けします。

家族Photo: Adobe Stock

老いた親が時代錯誤なことを言ってくる

【×】もうこっちも大人なんだから放っておいて

【◯】「そうかもしれないね」or「昔はそうだったんだね」

 就職、転職、入籍、結婚、転居、妊娠、出産、育児など、大きなライフイベントが発生し、親にあれこれと言われたときの返答の言葉です。

 私たちも立派な大人ですし、自分なりにいろいろと考えているわけですから「放っておいてほしい」と考えるのは当然です。

 とはいえ、つい心配で口をはさんでしまうのが親というものです。こちらからなにか相談したときやアドバイスを求めたときは、いろいろと教えてほしいものですが、多くの場合そうではありません。

 こういったかたちで親が「口をはさんでくる」理由は主に2つあります。

 1つは単純に子離れしていないから。2つ目は世代間のギャップに気がついていないからです。特に2つ目に関してはどの親子でも見受けられるケースです。

 高齢者世代と現役世代とでは、あらゆる価値観が変化しています。Z世代より若い方には信じられないかもしれませんが、昭和は駅のホームや列車、飛行機に喫煙席があり、移動中にはタバコを吸うのが普通でした。運動するときも水は飲まないというのが当然の常識として存在していました。加えて、体罰や男尊女卑も色濃く残っていたのが今の高齢者世代です。

 今では全く通じない価値観ですが、当時はそれが「主流」ですから、私達と価値観のギャップがあって当然です。そんな親に対して「もう大人なので口を挟まないで」といったところで効果はありません。価値観が違う人に「今はそうではない」と伝えても上手く伝わりません。

 では、どうすればいいのでしょうか。

 答えは、「そのまま言葉を受け取らず、かわすこと」です。〇の例にある「そうかもしれないね」や「昔はそうだったんだね」などが該当します。

 親の認識や価値観に対し否定や訂正を試みても大抵の場合、うまくいきません。皆さんだって、よかれと思って今どきの若い子にアドバイスをしたとして、「それって古いよ」と言われたらムッとしますよね。ですから、正面から言い返したところでかえってケンカになるだけなのです。

 なので無理に対応しようとしないのが良策です。問いかけに対して「しっかりと聞いた」ことだけを伝えて終わらせましょう。皆さんが現役世代なのですから、昔の常識に合わせる必要はありません。だからと言って親を傷つける必要もないですから、敬意をもって冷静に対処できるといいと思います。